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図I-6 (財)日本水路協会海洋情報室が毎週金曜日に発刊している相模湾・伊豆諸島海況速報図の例

 

3. 潮汐・潮流

潮汐の駆動力は、月と太陽の起潮力である。月(あるいは太陽)の引力と、月と地球を合わせた重心を回る公転運動の遠心力と、地球の重心のところで釣り合っている(図I-7a)。しかし、月に面した地表では月への距離が重心よりも近いため、引力の方が大きくなり、月の方へ引き寄せようとする力が働き、月とは反対側の地表では月からの距離が遠いため遠心力の方が勝って、月から離れる方向に力が働く(図I-7b)。そのため、月に面した地表、反対側の地表の双方で、水面を高めようとする力が働く(図I-7c)。これが起潮力である。引力は天体からの距離の2乗に反比例するが、起潮力は天体からの距離の3乗に反比例する。地表での太陽の引力は、月の引力の約200倍の大きさを持つが、起潮力は月の約1/2に過ぎないのは、太陽までの距離がずっと大きいためである。

起潮力はポテンシアル力であるため、月と太陽の起潮力を足し合わせたものが、実際の水面に働く起潮力となる。したがって、月・太陽・地球が一直線上に並んだ時、すなわち満月の時と新月の時に起潮力が最大となり大潮が起こる。また、地球から見て月と太陽が直角に見える時、すなわち半月の時、両者の起潮力が打ち消しあって、小潮が起こる(図I-8)。

また、月・地球の公転面に対して地軸が鉛直でなく、傾いているため、図I-9に示すように緯度によって起潮力の働き方が違ってくる。本州沿岸では、半日潮が卓越するのにたいし、オホーツク沿岸では一日潮が卓越するのはこのためである。

地表での潮位は、起潮力の分布に直接対応している訳ではない。大洋や海湾はそれぞれ複雑な振動系を形作っており、起潮力という外力のもとで振動しているのである。しかし、天体の起潮力の大きさや周期・位相は決まっているので、過去の水位変化を周期分析して将来の潮汐を正確に予想することが出来る。検潮所は日本全国に、海上保安庁水路部管轄のものが28点、気象庁管轄のものが71点あり、この他にも国土地理院や港湾局が管轄しているものがある。気象現象によって起こされる高潮等の気象潮や、地震による海底変動によって起こされる津波等は、別個に予測する必要があるが、上に述べた月・太陽の起潮力によって起こされる天文潮は、過去の資料から比較的容易に予測することができる。

 

 

 

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