河川の出水量が大きいときには、伊良湖水道の上層も塩分成層するが、そのときでも水深20m以深はよく混合され一様となっている、強成層期の湾軸方向の物質輸送はもっぱらエスチュアリー循環流によって行われている(藤原ら、1996)。
伊勢湾の循環流を模式的に示す(図7)。上段は4月から10月の強成層期であり、湾奥に流入した河川水は上層を通って湾口まで広がり、ここで混合されて底層に入る。ここで注意したいのは、河川水の影響が最初に底層に届くのは、湾内ではなく海峡部であるということである。またこの期間は水温上昇期でもあるが、日射による加熱の影響が底層に及ぶのも、湾内よりも海峡部が先である。このため海峡部の混合水は湾内底層水よりも軽くなり、中層に進入する。