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この進入層より下には、冬の冷たく重い海水が取り残される。この周囲から隔離された孤立水塊が貧酸素化する。

河川水は、湾奥に流入した後、上層を通って湾口に至り、ここで鉛直的に混合されて、中層を通って湾奥にもどり、さらに上層水にとりこまれて海面にあらわれる。このような鉛直循環を繰り返している。

一方、11月から翌年の3月の流れを図7下に示す。水温下降期になると、海峡部の海水の方がさきに重くなり、この海水が、こんどは湾内の底に沿って流入するようになる。

もともと図7は、大阪湾の貧酸素水塊を説明するために描いたものであるが、この図がそのまま伊勢湾にも適用できる。伊勢湾の場合、大阪湾にくらべて水深が深いため、厚い貧酸素水塊が形成される。

 

下層における流れと貧酸素水塊

本章では下層におけるできごとについて、もう少し詳しくみてみる。図7に示された進入深度の季節変化を、図8の黒四角と破線で示す。測点位置は湾の中央部である。冬の間は海底に沿って流入しているが、4月になると海底上18mに上昇し、中層進入が始まる。この中層進入は10月まで続く。図8はまた、酸素濃度(%)も表しているが、中層進入の下は外部から隔離され、貧酸素化していくことが明瞭にあらわれている。

中層進入時の水温・酸素濃度・リン酸態リンの縦断分布を図9に示す。伊良湖水道の水温は上下一様であり、酸素濃度も下層まで70%となっている。一方、湾内の底層には、低温で貧酸素の水塊ができている。この水塊は停滞性が強く、そのなかには有機物が分解してできた栄養塩が高濃度で含まれている。

下層の海水の起源は海峡部の混合水にあり、この海水が進入して下層水を作る。

 

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図8 伊勢湾中央部における進入深度(黒四角)と溶存酸素濃度(%)。

 

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図9 中層進入時の水温(上)、酸素濃度(中、%)、リン酸態リン濃度(下、μM)。1996年6月17日。

 

 

 

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