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「津なみの標(しるべ)」愛知県幡豆郡吉良町乙川 正方寺

正方寺の門前には、右に明治22年の「津なみの標」が、左に昭和28年の「高潮の標」が背を比べるように立っており、右が22センチ高い。ここから海岸線まで700メートル余ある。

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図6 津波の標 (日本福祉大学知多半島総合研究所提供)

 

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図7 正法寺古墳・幡頭神社周辺の新田開発図(「海と列島文化8、伊勢と熊野の海」:小学館)

 

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図8 正法寺古墳

 

図6は、津波の脅威を語る吉良町の石碑だが、元来この位置は図7に見るように中世以前には海岸そのものであった。図8の、現在は水田地帯を見下ろすような尾根に立地している正法寺古墳は、造られたときには海に突き出す小さな岬の先端にあった。

最初に述べたように伊勢湾の歴史と文化は、伊勢湾の現在と未来を考える前提である。単に過去を振り返り「教養的」な楽しみを求めるだけではなく、伊勢湾の再生、伊勢湾の有効利用、伊勢湾文化の継承・発展のために、それを活かさなければならないと思う。

最後に一言。ついこの前、日本海の不審船をめぐり、35ノットという船のスピードが話題になった。このスピードを聞いて思ったことがある。中部国際空港について、多様な議論があるのは承知しているが、空港へのあるいは知多南部へのアクセス手段として、海上交通はもっと議論されてよいのではないか。渋滞を考慮に入れれば、道路経由よりもはるかに早い。そして低公害ではないのか。

 

付記:講演という性格から、多くの研究者の見解を、それと明示せず語っている部分がある。また文章化にあたって、加筆訂正を加えている。あわせて、ご了解いただきたく思う。

 

 

 

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