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いつも患者が主役であることを忘れずに

 

姫路聖マリア病院

川渕 まゆみ

 

はじめに

 

今回ホスピス・緩和ケア病棟における終末期患者と家族のための緩和ケアの質の向上を図るために、緩和ケアの基礎を学習した。症状コントロールにおける看護婦の役割、がん患者の心理的特徴と援助について、また、がん患者家族への援助について学び得たことを以下に述べる。

 

研修での学び

 

1) 症状コントロールにおける看護婦の役割

がん患者にとっては、症状のひとつである疼痛は堪え難いものである。疼痛は、個々の患者の主観的なものである。すなわち、患者以外の者が疼痛を感じることはできないのである。患者の中には、自発的に疼痛があることを訴えない人や隠したがる人もいる。このように患者から訴えがなければ看護婦は疼痛に対応することが非常に困難となる。

疼痛を把握するために看護婦は、定期的に患者に痛みについて聞くことが必要となる。そして患者が表現した痛みを信じ、そのまま受け入れることが重要である。そのために看護婦は、患者の表現を認識する感性を持ち合わせていなければならない。

痛みをアセスメントするためにはまず、痛みの原因を知ることである。つまりそれは、医師と原因を合致させ解剖学的にどこから来ているどのような痛みなのかを知ることである。そして、アセスメントツールを用いて、評価していく。

ペインマネジメントを行うのに必要な看護婦の素質には、以下のことが挙げられる。1つは、痛みや痛み治療などの豊富な知識である。2つ目は、患者を全人的に把握する能力である。3つ目は、痛みを持つ患者に共感できる感性を持つことである。それから、チームの調整者としての能力が要求される。

これは、患者とその家族のために医師をはじめとする他の専門職種の専門性を理解した上で、それらを尊重しながら専門性を最大限に発揮することができるよう働きかけることであるといえる。それぞれの専門職種が同じ目的に向かって、最大限に能力を発揮し合うことは、チームとして最大限の仕事ができることでもあり、このことが個々の患者とその家族のニーズを満たすことにつながり、快適な生活を提供できるのである。

 

2) がん患者の心理的特徴と援助

多くの人は、がんと診断されると心理的な孤立を体験する。このような時に患者は、心配している気持ちを家族や友人と分かち合うことができれば、孤立感は軽減し、分かってもらえているという気持ちになることができる。

がんの治療は、身体に何らかの変化を残す。そのため、患者は自信の低下や自尊心の喪失によって他の人とは異なるという疎外感を持ってしまう。

また、基本的なニードを充足するために、他人に依存しなければならないことや多くの知識を持っている医療従事者の忠告や家族や友人の提案によっても傷つきやすくなっている。

このような心理的特徴のある患者に対して、看護婦は意識して相手を見ていかなければならない。そうすることによって、人間関係が深まっていくと、患者は自分の人生において傷ついた部分を話される。患者は心の癒しに私たちを用いられることがある。言い換えれば、私たちは患者の最後の癒し、慰めの器となるのである。

 

 

 

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