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2) 緩和ケアの精神的・心理的援助

患者の症状が何を意味するものかを理解し、心の動きを感じる感受性を持って、死を迎える患者を理解しようとする意識と態度が大切である。そのためには、正確な情報を提供し、患者が現実を受け入れ、立ち向かえるように支援することや、コミュニケーションを図り、患者が素直に感情を表現できるように援助すること、いつも側にいて最期まで共にいることを伝える、などの援助が必要である。

看護者は、コミュニケーションにかかわる技能を身につけておく必要がある。

コミュニケーション・スキルの基本は、傾聴・共感・感情への対応であり、これらをふまえてかかわることの大切さを再認識した。

実践では医療者の説明や話したいことが先行しがちであるが、コミュニケーションの出発点は聴くことから始まる。まず話を聴かなければ、どんな説明も患者には届いていない。そして、わかってもらえたと共感することが大切である。共感できたことが相手に伝わることが大切で、開かれた共感を示して患者と共に問題を解決していくことが大切である。

ロールプレイでは、自らを振り返ることで自分の持っている傾向が理解できた。今後、自分の欠点を修正しコミュニケーション技術を高めていきたい。

 

3) 緩和ケアの社会的側面への援助

社会的側面に対するかかわりは、実践では積極的に行われていない。入院が長期化する負担や経済的問題など様々な状況があり、大切な問題でもある。看護者は、患者や家族が相談できるような機会を提供することが大切である。看護者のかかわりだけでは十分でなく、専門家へ連絡を行ったりコーディネーターの役割を果たすことも必要である。

 

4) スピリチュアルペインと援助

霊的苦痛とは、生きる意味・人生の苦悩への問い・罪責感・希望についての問いがある。講義を通じ医療者は、人間としての触れ合いを持ち、癒しの役割を果たすことが求められている。患者は、医療者と接しながら自分自身に問い、人生の意味など気持ちの整理をしている。そのため医療者に求められる姿勢は、死に直面し不安を持っている患者から逃げないで話を聴くことである。患者の心に聴くことは、相手の気持ちがわかる感受性とかかわり続けようとする意志を持つことが大切である。患者は「私は死んだらどうなるのか」と問いながら、なんらかの意味づけをしようとする。医療者は、患者の言葉から死をどう受け止め、死後をどう考えるのかを一緒に考える必要がある。そのために医療者は、日頃から自分自身の生と死を見つめ、自分なりの人生観、死生観を持つ必要がある。

 

5) 家族への援助

家族ケアは、患者のケアと同様に大切である。家族だからと過剰な負担を負わせていたり、医療者のかかわりが十分でない。家族ケアとしては、肉体的にも疲労している家族が休める時間と環境の提供を行う。家族の訴えに耳を傾け、相談にのる。家族を個人としてとらえ、あるがままを受け入れ、最善と思われる援助を行う。医療者も最後まで共に支えていくことを約束する姿勢が求められる。

 

まとめ

 

看護婦に求められるものは、適切な看護技術と死生観を持ち感性を育てることである。患者の価値観を大切にし、気持ちに添いながら最期まで生きることを援助することは、人対人の関係であり、患者や家族から学ぶ姿勢が大切である。日常の中で医療者自身の心のあり方、生き方を培っていく必要がある。

看護者は、24時間を通じ患者のベッドサイドで直接的ケアを行っている。患者や家族の気持ちを聴き、他職種とのコーディネートを行っていくことが大切である。

この研修で緩和ケアの基礎から学び、緩和医療について理解を深めることができた。これらについて今後は、実践の中で深めながら援助へとつなげていくことが求められている。

 

 

 

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