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家族の方には、自分を責めるような思いではなく、肯定的なものを感じてもらえるような関わりが必要であり、今後自分の病院でも、遺族ケアについて見なおし、少しずつ取りいれていきたいと考えている。

 

患者の病状認識への関わり

 

このテーマは、私が以前からとても悩んでいたことであり、今回の研修を通して様々な迷いが軽減したので、とても嬉しく思っている。

私は今まで、患者が死を受容したような言葉を聞くことを、いつも心のどこかで恐れていた。患者を受け止められる自分の能力への疑問、それが間接的な告知につながるのではないかとの不安、チーム医療を乱すのではないかとの焦り、様々な気持ちがあったと思う。しかし、患者が真実を受け入れる状況は積み重なって得られるもので、あえて言葉で伝えるものではなく、こちらで察知し、死を受容するようにもっていくことができるということを学んだ。そして、死を受容するような言葉のサインは、患者が真実に耐えられるときであり、そのときこそ患者を支える大切な時期であるということを痛感した。このことはとても大切にしていきたいことであり、これからは、患者本人が解決できる力をもっているということを信じ、恐れずに患者と向い合ってみようと思っている。

 

スピリチュアルケア

 

私は、スピリチュアルペインの奥深さを感じ、自分の中でよく理解できたか自信はないが、死を直前にした患者には必ず訪れる痛みであり、深く関わっていかなくてはいけないことだと思う。

私は、最後まで生きる意味を見いだせずに死んでいく人に何度も出会い、いつも何をしたらよいのかわからず、無力を感じていた。しかし今は、決して追い詰めて探すのではなく、生きる意味が見つからなかったとしても、その人と一緒に最後まで見つめていくことが大切なのだと思えるようになった。その人が、とても愛されていると感じられるよう、同じレベルで関わっていくことの大切さも理解できた。同じレベルとはとても深い関わりであり、私は、今までの人生を語り、罪への和解、そして、死後の世界にまでも共に語り合えることがスピリチュアルケアではないかと思っている。その際、講義でも学んだように、自分のためにも死生観をしっかりもち、その価値観にとらわれないよう人と関わっていくことが大切である。

沼野先生がいう“観音様のほほ笑み”は忘れられない。ターミナルケアは、やさしく、そして明るく。私は、人がもつ自然な感情に、自然に応えていけたらすばらしいと思っている。これは緩和ケアの基本でもあり、緩和ケア病棟のみならず、むしろ一般病棟ではもっと多くの人が必要としているように思われる。そして、私たちが心がければ、どこででもできる大切な関わりではないかと思う。

 

おわりに

 

緩和ケアは、特別なところで行われるのではなく、ターミナル期における患者のQOL向上の目的が頂点にあり、それをチームで積極的に関わっていくことであると思う。

そのために、基本知識と他職種の理解は欠かせない。また、患者と同じように家族のQOL向上を考えることが必要であり、遺族ケアもチームで行わなければならないことである。看護婦としても、私は、患者が真実を受容する時のサインに敏感であり、逃げずに患者と向かい合う覚悟をもてるようでありたい。そして、患者が真実を受容し、それでも生きてきたことや、これからくる死を否定しないような関わりができる看護婦になりたい。

今回の研修は、私にとって本当に貴重で、全て生かしていきたいことではあるが、日々自分自身を振り返り、成長させていく努力をすることから始めていきたいと思う。そして、緩和ケアは、ターミナルケアの原点であることを忘れずに看護していきたいと思っている。

 

 

 

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