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(1) 緩和ケア病棟設立の理念

1]がん医療の継続的ケアの実施。2]徹底的な症状の緩和。3]患者の日常生活を整える。4]患者の家族を支える。

(2) 緩和ケア病棟の目的

1]がんの治癒や延命を目指す治療を行うことではなく、がんの進行に伴う症状や苦痛の緩和を行い、患者さんが日常生活を快適に過ごすために援助をする。そのために、痛み、食欲不振、全身倦怠感、嘔気、嘔吐、呼吸困難等の身体症状に対して積極的な治療を行う。

2]病気が治癒しないとしても、患者さんが家族と一緒に自宅で過ごすことができるように援助する。そのために在宅電話サービスや訪問看護ステーションの依頼を行う。

3]患者さんが自宅で過ごすことが困難になったとき、入院していただき、専門的な看護とケアを提供する。

 

病棟では、平均在院日数が20日をきり、症状コントロールもしくは看取りのための1〜2週間の入院が多い。入院のためにはPCU外来登録が必要で、外来通院ができることが条件となっている。しかし、入院待ちの方が多く、入院は登録順に検討されるため登録をしてもすぐに入院をすることはできず、約1か月待ちの状態である。そのため、在宅で必要時症状コントロールのための短期入院をしつつ、外来・在宅電話サービス・地域の訪問看護などを利用し過ごす期間が長く、厳しい状態になって入院する方が多いということであった。大体亡くなる2週間前くらいまでは在宅で過ごせるケースが多いと聞いた。必要な方が的確な時期に入院できるようにベッドコントロールしていくために、外来・在宅電話サービスが大きな役割を果たし、情報交換が信頼関係の下、確実に行われている。

なぜぎりぎりまで在宅で過ごせるケースが多いか、それだけの支えを在宅者にしているということであろう。しかし、日本全体を考えると、社会的に在宅で過ごせる支えの不足をひしひしと感じた。また、PCU外来・電話相談・在宅電話サービスでのケアを見聞きして学ぶ中で、普段病棟にばかり目を向けていた自分に気付いた。サイコオンコロジーについての学びの中で、普段末期状態にある方にばかり目を向けている自分の視野の狭さにはっとしたが、それだけでなかったのである。今後、この研修のことを思い出すたび、上を見て深呼吸したいと思う。

 

2) 症状コントロール、家族・遺族ケア、チームアプローチ等の実際と学び

入院時に揃う情報が非常に豊かである。PCU外来・在宅電話サービスからの情報、患者さんが院内他科に関わっていた場合も多く、そこからの情報などが揃う。入院してからは必要最低限の検査が行われる程度であっても、以前からのデータや結果も有効に利用される。チームアプローチのための具体的方法として、合同カンファレンス、チームミーティングが時間を設けて定期的に行われていた。合同カンファレンスは、毎週月曜・午後1時間。PCU医師・内科医長・看護婦・看護助手・薬剤師・栄養士・臨床心理士・在宅電話サー一ビス担当スタッフ、適宜、他科の医師などが参加し、主に新規入院患者について情報交換し、今後の方針を決定もしくは方向づけする。チームミーティングは、火〜金曜・午後30分間。病棟は2チーム制となっているため、各チームごと、主に看護婦・医師で患者・家族について情報交換し、症状コントロール、患者の心のケア、家族のケアなどに活かしている。それぞれの専門職が専門職内で考え、情報を交換し、決まったカンファレンス等のとき以外にも他の緩和ケアチーム員と密に情報を交換していた。

より良いケアは様々な職種の人がいるからできるのではなく、様々な職種の人がまとまってより大きな力を発揮できるからできるのだと強く思った。できれば、様々な職種の人が緩和ケアチームにいることが理想である。それぞれの視点・専門性を活かし、豊かなケアができる。

 

 

 

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