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刻々と変化する病状に対し家族へのスピーディーな病状説明は、予期的悲嘆をするための手助けになりうることもあるのではないかと思います。愛する人の喪失に耐え、混乱状態にある情動に秩序を取り戻し回復しようとするのは自然な反応ですが、この悲嘆の作業に失敗すると、深い悲しみが長く続いたり、うつ状態になることがあり、専門家の助けが必要となります。

緩和ケアにおける病棟設置基準は、今までの病院の基準には類がないような専有面積の広さがあったり、看護婦の配置基準も入院患者1.5人に1人以上の割合であったり、診療報酬も定額制ではあるが点数の伸びを示している。悪性新生物での死因が増加の一途をたどる中で、ホスピス・緩和ケア病棟の必要性が認められての評価と考えて良いかと思いますが、急増する病床に肝心の看護の質がついていかなければ、誰のための、何のための緩和ケアであるかが解らなくなってしまうでしょう。そこで行う緩和ケアの理念に返ることになるのではないかと思います。

 

まとめ

 

緩和ケア養成講座を受講後、私自身の中で緩和ケアに対しての想いが少し変化していることに気づきました。緩和ケアで行われている医療は、内容の幅は広く、症状の緩和に有効性があり患者本人が希望すれば外科的処置をも辞さないようなところもあるようですが、治癒や治療を目的とするものでなく苦痛となる症状の緩和に焦点が当てられて行われるものであることが、一般病棟との大きな違いであると思われる。患者のQOLを高めるために、一つ一つの事柄が患者にとってどのような意味を持つものか、いっしょに考えながら進める医療、現在望まれているインフォームドコンセントを行うことや、患者を全人的にとらえてケアをしていくことは一般病床でも望まれることであるといえます。必要なコミュニケーションのスキルも、症状緩和における病態の知識、薬理作用の知識も、チームアプローチも、みんな一般病棟のケアにも必要なものであることが言えると思います。療養の環境が少し広かったり、特殊な職種の人が介入したり、時間の経過が緩やかに感じられたり、特色としての違いはいくつかあげられます。しかしどれも必要なこととは知りつつ、治療のために患者に制限が加えられたり、じっくり関わることができないのが一般病棟ではないかと思います。個人を尊重し、医療者がそこに全身全霊を尽くしたケアを提供することができる所としてあるのが、緩和ケア医療を行う病棟であったり、チームであったりするのではないかと思います。緩和ケア病棟で勤務する看護婦に求められるものがとても大きく感じて、本当に自分がそこで患者に満足のいくケアを提供できるかどうかは、自信がないところであり、今ならやめられるのかとも考えたりしましたが、自分が将来受けていきたいと思うケアを提供できるようになることが、私自身の目標であり、そこを目指して進んでいこうと思っています。

 

おわりに

 

6週間の緩和ケアナース養成研修に参加して、自分の人生観に少しばかりだが広がりができたように感じました。癒されることでの心の和みを体験し、自分が誰かに癒しを与えられるようになりたいと思うようになったり、患者を受け入れるときに自分の器がとても小さなものに思えたりしたことです。実習ではじめて緩和ケア病棟に足を踏み入れたときには、病院らしからぬ様子にとても驚きましたし、病棟の看護婦さん方がとても優しく、患者に仕えるものとしての謙虚さにとても感心させられました。病棟の看護婦さんに教えていただいたことですが、ホスピスで働く看護婦に必要なものといわれるものなのだそうですが、「穏やかさ」、「静けさ」、「明るさ」、「ユーモア」を自分のものとしていけるように、人間としての成長も心がけていきたいと思います。

6週間共に学習をしてきた23人の看護婦さんや講師の先生方、実習でお世話になりました病院の方々に心から感謝申し上げたいと思います。

 

 

 

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