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それから、ターミナル期のリハビリテーションについての講義も興味のあるものでした。ターミナル期のリハビリは機能回復が目的ではなく、その残りの人生をいかに生きるかという視点で行われるリハビリであり、そしてADLが自分でできるということが、人間としての尊厳に影響するということでした。

まず、その患者さんが残りの人生でやるべきことや、どう残りの人生を送りたいのかを知り、その目的にそって必要なリハビリが行われるはずであるということです。例えば、作家の人が、書きかけの本を仕上げるという目標があれば、書く動作ができるようにADLを保つリハビリが必要であり、そのことでたくさんの体力を消耗してしまうなら、他のトイレへ行くとか、食事をするというADLは介助をしてもいい、ADLの優先順位は低くなるということを教えていただきました。そのためターミナル期のリハビリは、病室でADLに合わせて行われるものであるし、PTやOTにたよりすぎるのではなく、看護婦の役割であると思います。ターミナル期の患者さんの生活を支えるというリハビリは、より良く生きるためへの援助であり、ホスピスケアそのものであるのです。

が、このような考え方の他に、リハビリ室で機能回復訓練をすることが患者さんの望みなら、それも良いということを、実習中、山崎先生に教えていただきました。結果的には絶望することになったとしても、そこまでがんばったプロセスが大切であるし、あきらめもつくのではないか。絶望し、あきらめることは、とても辛いことであるけれど、それを医療者が支えるのだということでした。

いろいろ講義や実習を通して感じたことは、なんとか患者さんの力になろうとすることは、たとえ、問題が解決しなかったとしても、患者さんの支えになるということです。医療者があきらめてしまったり、足が遠のいたりしてしまいがちですが、そうではなく、患者さんを見捨てず、寄り添う関わりを大切にしたいと思いました。

 

3) 家族や患者の心理を理解し、心のケアに対する知識・技術を習得する

がんの患者さんに抑うつの症状がでるのは、キューブラー・ロスのいう5段階の中での正常な反応であると思っていました。しかし、内富先生の講義の中で、それだけではなく、痛みや苦痛症状からうつになってしまう患者さんもいて、治療の必要なうつもあるということを知りました。がんの患者さんに毎日、身体の調子を聞くように、心の負担についても毎日聞いてみることが大切だということ、また、うつ病は患者さんのQOLにも影響してしまうため、早期発見、早期治療が必要だということを学びました。患者さんは、自分がうつ病であると知れば、恥ずかしい気持ちや、疎外感を感じるとのことですが、「がんになれば皆こうなる。ただ人によっては長く続く人もいる」と患者さんに話せたら良いのではないかということも教えていただきました。それから、傾聴するということの本当の意味を自分なりに理解し、患者さんと関わっていくうえで、非常に重要であるということも再確認できました。

がん患者の家族への援助では、患者さんも含めた家族を一単位としてとらえ、サポートしていくという考え方を学びました。家族にとって、患者さんが苦しんでいるのはストレスであり、まず患者さんの苦痛が緩和されることが大切で、そのことが家族のサポートにもなり、家族の状態が良ければ患者さんのためにもなるという話を聞き、患者さんと家族へのケアは、切り離して考えることはできないと思いました。家族が危機にぶつかった時、どんなに解決が困難であっても、医療者がその解決方法を決めるのではなく、家族が解決できるようにサポートしていく。主役は患者さんと家族であり、医療者はナビゲーターのような存在であるということ、どんな道のりであっても、そのプロセスが家族にとって大切であるということを学びました。

また、時には、患者さんと同じくらい家族が援助を必要としていることもある、ということも頭に入れておきながら考えていけたらいいと思います。

 

 

 

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