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家族のセルフケア機能を高めていけるような援助をしていかなければならない。家族ケアは、家族と出会ったその時から始まる。渡辺先生は、家族のアセスメントの内容を1]健康問題の全体像、2]家族の対応能力(構造的側面、機能的側面)、3]家族の発達課題、4]過去の対処経験、5]家族の対応状況、6]家族の適応状況とあげている。これらを念頭において家族アセスメントをしていくことで、家族の問題が明らかになってくることが理解できた。

国立がんセンター東病院では、入院時に必ず、患者、家族、医師、プライマリーナースが面談を行い、その後家族とプライマリナースが再度面談を行っていた。家族にどのような問題が生じているのか、家族関係を把握し必要なアプローチを行っていた。

グリーフケアについては、今回の研修で学ぶことはできなかった。当施設では、年2回の遺族ケアを行っている。遺族ケアに参加された家族からは「大切な家族を失った私たちを気にかけてもらっているだけで嬉しい。同じ気持ちの家族と話せることで気持ちが分かち合えていい」という話をよく聞く。しかし、この方法がいいのかどうなのかは分からない。現に病院に足を踏み入れるのが恐いと話されている家族もいる。家族の悲嘆は、その家族にしか分からない。しかし、ともに過ごせた時間、共有できた時間に感謝しながら、患者、家族の良き理解者として心のオアシスになっていく必要があるのではないか。

 

進行がん患者の心理的特徴と援助

 

患者は、進行がんということで死に直面しているため、死に対する恐怖、不安、悲しみや苛立ちが生まれてくる。しかし、どういう状態でも患者は希望を持つことができる。

射場先生の講義の中では、終末期患者の希望は、生きること、自分らしさの表現をすること、死を超越することと学んだ。そして、私たちは、患者の体験に近づくことが大切であると学んだ。自施設は、今年の4月からパストラルワーカーが主に霊的ケアを担当しているが、私たちの関わりのなかで、温もりを感じることで生きる意味を見いだしていければいいと感じている。患者を家族と一緒に支え、同じ空気を共有し、最後まで一緒に生きることが大切だと思う。

また、内富先生は、自分が行っているカウンセリングが本当に意味のあるものになっているのか、患者の能力を引き出していくことがカウンセリングだと話されていた。

 

まとめ

 

ほとんどの講義の中で、コミュニケーション・スキルの必要性を感じさせる内容が含まれており、コミュニケーション・スキルが患者、家族そしてチームメンバーを癒す力があることを学ぶことができた。私にとって、コミュニケーション・スキルを身につけることは大きな課題の一つである。

また、研修報告会を聞いて、各施設の理念や方針、地域性などによりさまざまな緩和ケア病棟やホスピスがあることを理解した。自分たちのケアの方向性を十分理解してもらえるように関わり、一緒の目標を持つことが大切であると分かった。そして、私自身の心の揺れの原因は、自分の中の考えをしっかり持っていなかったため、患者、家族に巻き込まれ、自分を見失っていたのではないか。看護観、死生観を明確にして患者、家族と向き合っていこうと思う。

 

おわりに

 

緩和ケアの基礎を学んだことで、自己の課題を明らかにすることができた。しかし、未だ消化できていない部分もあるため、これから少しずつ整理し、自分たちのホスピスを創り出していきたいと思う。

 

 

 

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