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症状コントロールについて

 

これまで、末期がん患者の症状コントロールというと、ドクターがモルヒネ等の薬物によって行うもの、というイメージがあった。しかし、ナースだからできることや、ナースが判断しなくてはならないことも数多くあることを学んだ。

排便障害、不眠、食欲不振、倦怠感は、特に軽減させることの難しい症状であるが、今までは、便秘になったら下剤、眠れなければ睡眠薬、食べなければ点滴、倦怠感は仕方がないというように、私達に何ができるか考えることも調べることもせず、薬物以外の手段をほとんど持っていなかった。ここで学んだ方法は、直接患者の身体に手を触れて行うものが多く、手当てとは正にこのことで、こういうことこそ大切なんだと改めて感じた。

また、特に末期がん患者の痛みには様々な原因が考えられるため、ナースは痛みの原因をアセスメントできなくてはならない。そのためには、患者の訴えをよく聴くことが大切であると教えられた。つまり、その表現が、かなり正確に原因を伝えている、と。しかし、それでわかるためには、私達が痛みのメカニズムをしっかりと理解していることが前提となる。知識不足から誤った判断をし、対処可能な痛みも軽減できなかったことも多かったのではないかと反省する。

 

リハビリテーションについて

 

これまでリハビリテーションというのは、機能回復訓練と解釈してきた。しかし本来の意味は、全人間的復権、すなわち障害のある人の障害を減らし、隠れた能力を開発増進して最高のQOLを実現することであり、それは過去への復帰ではなく、新しい人生の創造であることを知った。

この講義は、全ての講義の中で最も印象に残っており、内容の全てに強い衝撃を覚えた。

特に、“ADLが自立していることは、人間の尊厳にとても大きく影響している”という言葉を聞いた時、これまでどうしても理解できなかった患者の行動に対する数々の疑問が解けた。例えば、床上での排泄を拒み、一人でトイレに行こうとして転倒するという出来事は、非常によくあることだが、いつも、再三ナースコールを押すよう念を押していたにもかかわらず押してこなかった患者が悪い、で片付けてきた。しかしこれは、何かあったら責任を問われるのは私達という、責任逃れのための手段であり、可能な限り最後までトイレで排泄したいという、人間の尊厳に関わる基本的欲求であることを、全く理解していなかったことがわかった。

また、末期患者のリハビリテーションとは、体力を増強させることではなく、残された体力をいかに使うかということ。これで帰れないと言われていた患者が家に帰れたことも、しばしばあるとのことだった。そして、時間や体力が限られているので、優先順位が大切であること。他の自力でできそうなことに対しても介助することで、やりたいことのために体力を残しておくことも考えなければならない。そのためには、残された時間で何をやりたいかを知る必要があるということも学んだ。

患者のQOLを向上させるために、リハビリテーションの持つ役目は非常に大きいことがよくわかった。リハビリテーションは、訓練室でOTPTが行うものだけではなく、病棟の中でナースが生活動作の一つ一つに対してアプローチしていくものであることを、常に忘れずにいたい。

 

おわりに

 

これまでの看護を振り返ると、反省すべき点ばかりで、自分は今まで何をやってきたんだろうという思いにかられる。この研修に参加しなければ、これらのことに気づくことさえなくきたであろう。

現状は問題が山積みで、何から手を付けていったら良いのかわからない状態だが、まずは自分が変わることだろう。そして、焦らず小さなことから一つ一つ始めていきたい。

最後に、この研修は、緩和ケアに携わるナースだけではなく、全てのナースが受ける価値のあるものだと感じたことを付け加えておきたい。

 

 

 

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