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症状マネジメントについて

 

患者、家族がホスピス病棟を希望する理由の一つとして、症状の緩和があげられている。痛みや嘔気、倦怠感、不眠など患者はさまざまな苦痛症状をもち、その症状を緩和することが患者のQOLの向上につながる。患者個々の状態に合わせマネジメントしていくことが重要である。ホスピス病棟では日々異なる患者の症状に合わせたきめ細やかな指示が出されており、すばやい対応がされていた。痛みだけでなく、発熱や倦怠感などに対し、薬物が定時使用されており、すべての苦痛症状からの解放への努力がされていた。また、多くの安楽物品が使用されており、新たな苦痛発生の防止と、処置に伴う苦痛をも発生させない配慮がされていた。具体的な方法を知ることができ、参考になった。

痛みは、全人的な痛みであり、身体だけでなく心理・社会的痛みへのケアと共に行っていかなければならない。ある患者から「あーここにいていいんだなーと思う。ここに私の居場所がある」との言葉を聞いた。家族をはじめ周囲の人々に気を使い、不安を持ち、癒されることのなかった苦痛から解放されたのがホスピス病棟であったと感じた。苦痛からの解放がこんなにも患者の気持ちを穏やかにさせ、より良い生へと向かうパワーになることを実感した。

 

家族への援助

 

家族が互いに影響し合っており、その存在を切り離すことはできない。患者、家族を一つとして考え、援助していくことが大切である。ホスピス病棟では、患者と家族の時間を大切にされ、訪室の時間への配慮や家族への積極的な声掛けなど行われていた。病室は家族も泊まれるよう広いスペースがとられ、畳が敷かれている。その中で患者と家族との穏やかな時間と空間が感じられた。また死亡退院された患者には、お別れ会が実施されており、家族の悲嘆へのケアの一つとなっていた。

 

チームアプローチ

 

ホスピス病棟では、コーディネーター、チャプレン、栄養士などさまざまな職種によってチームアプローチがされている。役割について話を聞く機会を得ることができた。それぞれが患者、家族のためにということを第一に考えており、情報を得るためカンファレンスに参加されていた。チーム医療に欠かせない存在であることを感じた。また、医師とのコミュニケーションが密にとれており、情報や目標を共有することを大切にされていた。

緩和ケアでは、それぞれの役割を認識しながら互いの知識や技術を補い合うことで、より大きな力にするためにチームアプローチは重要である。実習によってそれを実感できた。

 

おわりに

 

勤務している病院でも、来年緩和ケア病棟が開設される。今回の実習で初めてホスピス病棟を見ることができ、看護婦と共に行動することで、患者、家族への援助を体験し多くの学びを得た。緩和ケアとは、当たり前の援助を大切に丁寧に行うことであり、現在行っている看護をより深めていくことだと実感した。実習において、自分自身の今後の課題も明確にすることができた。それぞれの施設によって、ホスピス病棟の特色やあり方は異なり、今回の学びを参考に私達の緩和ケア病棟を作っていきたい。

 

 

 

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