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当たり前の援助を大切にして

 

国立呉病院

岩田 美香

 

はじめに

 

現在、緩和ケア・ホスピス病棟は57施設となり、病床数は1,000床を超えた。その中ではじめて認可を受けた、聖隷三方原病院のホスピス病棟で実習を行った。看護婦と共に行動することで、患者、家族のその人らしさを大切にしたかかわり、症状マネジメントの実際など学ぶことができた。また患者、家族を取り巻く多職種の方の説明を受け、チームアプローチの重要性を知った。講義での学びを実体験することで、知識をふくらませることができ、自分自身のものとすることができたように思う。実習での学びをここに報告する。

 

実習目的・実習目標

 

目的

緩和ケア病棟における看護の実際にふれ、研修における学びとこれまでの看護実践を振り返り、今後の看護に生かせるように統合させる。

 

目標

・一般病棟とホスピス病棟の違いを体験し、理解を深めたい。

・患者、家族の生活の場として、施設がどのように利用されているか知り、その効果について理解する。

・患者、家族の1日の生活の流れを知り、看護婦がそれにどうかかわっていくのか具体的に知る。

・患者、家族を理解するための情報収集の方法や、症状マネジメントにおける看護の実際を学ぶ。ケアにおいて工夫されている点などについて学ぶ。

・チームアプローチの進め方や、チームの中で看護婦に求められている役割について学ぶ。カンファレンス等に参加したい。

・緩和ケア病棟開設にあたり、看護基準や運営方法など参考にさせていただきたい。

・ホスピス病棟における患者、家族の心理について理解するきっかけをつかみたい。

・病棟内でのイベントがどのように計画実行されているのか、また患者に及ぼす効果について知る。

 

その人らしさへの援助について

 

5日間看護婦と共に行動し、患者、家族とのかかわりについて学んだ。身体的、心理的、社会的側面から細かな情報が収集され、プライマリーナースが中心となって看護計画が立てられ、個々に応じた援助が行われていた。患者と家族の時間を大切にしていること、処置を行う際には患者の意見を確認しながら行っていることを知った。ある看護婦から、小さなことでも患者に問い決定してもらうことが、今後の自己決定に大きくかかわってくる、との話を聞いた。患者の気持ちに沿う援助を行うためだけでなく、毎日の積み重ねを大切にされているためであることを知った。

その人らしさを大切にすることとは、患者と家族のこれまでの生きてきた背景を知り、価値観を受け入れた援助を行うことである。患者は入院した時、患者の役割を強いられ、自宅とは全く異なった場である病室で過ごさなければならない。その患者役割から解放し、人間へ戻る作業が緩和ケアでは重要である。その作業は、その人らしさを大切にしたかかわりを抜きに考えることはできない。それがホスピス病棟では実際に行われていることを知った。実習によって、その人らしさとは何だろうかと考える機会を得ることができた。

 

 

 

 

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