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慣れてしまった病院の環境が良いと言われる患者もいますが、やはり住み慣れた家で家族と共に過ごすことが望ましいと考えられますし、家に帰れるタイミングを逃さずに在宅を進めていく必要があることも感じました。しかし家族は不安でいっぱいであり、在宅を進めるにあたっては、家族のサポートを十分に考えていかなければいけないと思います。

実習先の施設は宗教法人として教会を所有しており、牧師(チャプレン)もチームの一員として関わりを持っていることにうらやましさを感じました。トータルペインを考えたときに、看護者として、身体的痛みや精神的痛みには対応できても、霊的な痛みにはなかなかうまく関われないような気がします。広い人生観、価値観で物事を捉える思考と、コミュニケーションのスキルが必要であると思いますし、専門的に霊的ケアを行える方がいることがとても大きな助けになるような気がします。また宗教観が緩和ケアを行っていく上での基本理念であり、スタッフみんなが同じ理念の理解のもとに関わりを持てているような気がしました。当院にも理念があるのですが、なかなか日々の自分の行動における原則とはとらえられていない職員がいることをとても悲しく思います。緩和ケア病棟を開設するにあたっては、理念となるものを共通認識でとらえていく必要があり、実践においては常に理念に立ち返ってアセスメントしていく必要があることを感じました。

講義と実習を終えて、自分の中にあった緩和ケア(ホスピス)についての考えが変化していることに気付きました。以前は何か特別な看護をするところではないかという認識を持っていましたが、今は看護の基本となるところを凝縮した関わりを持っているところではないかと思っています。医学が進んで治療が優先されるようになった臨床において、本当に忘れてはならない患者中心の医療についてこの研修を通して学ばせていただいたと思います。これから開設する病棟においての役割として、この看護の基本となるところをしっかり押さえた看護婦を養成し、そして病院全体の看護婦が看護の基本を身につけていけるようにしていくことがあるように感じました。自分自身が看護婦としてまだまだ未熟である中で、役割を背負っていくことが時々重荷に感じられますが、自分が受けたいと思う医療をつくっていくことが将来自分に返ってくることを信じて努力していこうと思います。

2週間お忙しい中、快く実習を受けていただき、たくさんの学びをくださった病棟の婦長さん、スタッフの皆様、牧師様、コーディネーターの方に心から感謝とお礼を申し上げたいと思います。

 

 

 

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