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3) チームアプローチについて学ぶ

実習病院では「やさしさの医療」をめざし、チームアプローチによるホスピスが実践されていました。がんと診断され、自分の問題として死に直面し苦しみ、葛藤している人々を、医と心の両面から支えていくために、医師、看護婦、MSW、栄養士、薬剤師、ボランティアなど、各専門分野のスタッフでチームが組まれていました。申し送り、カンファレンスにもチームメンバーが参加し、必要な情報を収集し専門に合わせたケアが提供されていました。チームメンバーは、お互いの働きを信頼し独自の働きがなされていました。自己の施設ではプライマリーナースがチームのコーディネーターの役割を担っていますが、ここではその問題に応じてコーディネーターは変化していました。また、それぞれのチームメンバーが、多側面から患者の心を支えられているのがとても印象的でした。患者は医療者によって反応を変えることがあり、多職種のチームメンバーが患者をサポートしていく大切さを学びました。

 

4) 緩和ケアにおける看護婦の役割について学ぶ

緩和ケアにおける看護婦の役割は、1]症状マネジメント、2]日常生活の援助、3]精神的、スピリチュアルな援助、4]家族のケア、5]チームのコーディネーターと考えています。今回の実習では症状マネジメントについて深く学びました。また、チームの中での看護婦の役割についても考えることができました。日常生活の援助は看護婦独自の役割であり、患者の身体状態に合わせ生活を考え、援助を創意工夫していくことが大切だと考えます。また、看護婦は患者、家族にとってもっとも身近な存在であり、日々のケアを通してニードを把握しやすい立場にあります。患者を全人的にとらえ、タイムリーに援助を行うと共に、チームへ情報を提供していくことが大切だと考えました。

 

5) 継続看護について学ぶ

訪問看護ステーションで1日研修させていただきました。在宅で過ごされる患者さん達は、住み慣れた家でひとりひとりがその人らしく家族に支えられ生活されていました。苦痛な症状が緩和されていれば、家で過ごす方がQOLは上がるように思えました。在宅ホスピスを可能にする要因は1]患者の希望、2]家族の同意、3]医療者のサポートが得られることと言われていますが、最後の時をどこで、誰と、どのように過ごすのか、そのためにはどのような援助が必要であるのか、患者さん、家族と共に考えていきたいと思います。また、訪問看護婦の役割も重要だと思います。終末期にある患者は状態も変化しやすく、いくつもの身体症状を抱えています。訪問看護婦は1週間先の患者の状態を考え、状態をアセスメントし、指導を行い、医師との連携をとっていました。また、家族の心理的サポート、調整も担っていました。責任が大きく知識、技術、判断力を要求される仕事ですが、訪問看護婦の姿は輝いていました「この仕事が好きだし、ひとりひとりの患者さんを大切にしている。その根底にあるものは愛だと思う」と話されたことが印象的で、力をいただくことができました。

 

受け持ち患者を通して学んだこと

 

2週間を通し2人の患者さんを受け持ちました。一人は55歳の男性で、原発不明の腺がんで、皮膚と骨に転移を認めました。主な症状は、骨転移による痛みで、実際にアセスメントシートを用いて症状マネジメントについて学ぶことができました。また、一人暮らしで、社会的問題も大きくMSWが調整を行っていました。症状が進行していく中で身体の弱りを自覚され、残された時間をどう過ごすのか、目標の調整が主治医、プライマリーナース、MSWで行われていました。身体的問題、社会的問題を別々に考えていくのではなく、残された時間の中で具体的に何ができるのか、患者を主体に考えていくことが大切であると学びました。

 

 

 

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