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毎日の関わりの中でY氏の言動の根底にある感情が何であるのか考えたが、私にはつかめず悩んだ。しかし、患者中心に考えること、ありのままの姿を引き受けることから見守る態度で接していった。ある日、Y氏の言葉から、Y氏が私を自分の不安や悩みを打ち明ける対象ではないと考えていることに気づいた。それまで何となくY氏に踏み込めていないような気持ちでいたのだが、訪室すると、音楽を聴かせてくれたり話を合わせてくれたりすることを考えると、患者ではなく、人として私に接していたのだと思い、それが私の役割なのだと感じ、不安や身体症状に脅かされながらも人を気遣うY氏の健常的な側面に触れたと思った。また、私ではなくてもY氏が不安を誰かに話せているのか気になり聞いてみたところ、看護婦に話せているとの答えがあり、それをチームに返すのが私の役割であると考え伝えた。Y氏の感情の明確化や不安の援助には至らなかったが、ありのままの姿を引き受ける姿勢やチームで患者と関わっていく大切さを学んだ。

 

・プロフィール

O氏 42歳 女性 肺がん 胸膜転移

背部の疼痛、はり感の緩和目的にて入院。MSコンチン120mgをベースに鎮痛補助薬を内服中。

<実践と考察>

実習施設では疼痛コントロールにおいて初期、継続に分けてアセスメント用紙を使用し、疼痛の程度、副作用の有無、身体以外の痛みを統合してアセスメントし、コントロールを行っていた。実際にそれを使用して症状マネジメントに参加させていただいた。スケールを使用することで痛みの状況や目標、副作用や身体以外の痛みが患者にどのような影響を与えているかが一目でわかり、患者も参加しながら、共通理解してケアを行うことができることを学んだ。徐々に病状が進行していき、不安を訴えながらも「帰りたい」と言う患者に対して傾聴的態度で接するよう努めた。苦痛が日ごとに強くなり孤独感に苛まれていく中で、傍に寄り添い、話したい時に話して感情を表出できるよう援助することの大切さを改めて痛感した。また、その上で問題を明確化することの重要性を知った。このO氏の場合は、夫と共にいたい気持ちから帰りたいと言っていたのだが、帰りたいと言っているから早く退院させるのではなく、根底にある感情を明らかにし、その問題を解決することが大切なのだと学んだ。

 

チームアプローチについて

 

実習施設ではチームアプローチがとても生かされていることを実感した。各々の専門職が同じ目標に向かって専門性を十分に生かし、問題解決を行うことの効果、重要性を学んだ。多くの職種が関わることで多側面から患者を看、「のりしろ」ができて、もれることなく患者のニードをキャッチできると思った。また受け持ち患者を通じてチームでどのように関わっているかを知り、患者の周りに各職種が大きく手を広げて待っている姿勢を感じた。実際に各職種の方々から話を聞いて、それぞれの役割や大切にしていることを知ることができたが、その中でも特にボランティアの活動が印象的だった。普通の人の目で病院をとらえ自主的に活動していく様子、何も持たず詳しい情報もなくベッドサイドに行き患者の心を開いていく様子に、ボランティアの成熟性、病院にボランティアがいることのありがたさを感じた。またチームアプローチにおいて、看護婦は患者の生活の流れを支えていることや、患者を、そしてチームを全体的にとらえることができるためコーディネーターとしての役割ができることを知った。MSWの方に「私達が話を聞いている時でも看護婦さんが枕の位置一つ置き換えることで患者さんの表情が違ってくる」と聞き、患者の生活を整える看護の基本がいかに大切であるか、それがなし得ないと他職種の方も専門性を発揮できないことを学んだ。

 

 

 

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