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つまりそう簡単にはここまで出て来られなかったということですが、南沙に出て来たのが1988年です。

そのときどういう出方をしたかということですが、この地図をご覧ください [南沙諸島付近の地図] 。この地図は私が使っているのですが、この地図をかなりいろいろな方が適度に修正して、私のものをそのまま使っているのではない、という形で使っているのですが、それはそれで結構なんです。これが大平島という台湾が持っている一番大きな島です。これはかつて日本が占領支配していたところで、サンフランシスコ条約で日本はここを放棄したわけです。かなり大きな島で、淡水が出る唯一の島です。あと、青色で示してあるのが、ベトナムが持っている島で、緑色で示しているのがフィリピン、「マ」で示してあるのがマレーシアというように、非常に入り乱れているわけです。この赤い線を引いたところに、中国は1988年に入り込んできて、ここを押さえるということをするわけです。このエンセ島というところがありますが、ここに人工の島をつくってしまうわけです。

 

9:南シナ海シーレーンの地図

 

[南シナ海シーレーンの地図] この地域は、黒い線が引いてあるのがシーレーンです。最初に中国が出て来たところはシーレーンの近く、ベトナムが領有しているところに割り込んできて出てくる。それはシーレーンに添っているところである。それから青く塗りつぶしてあるところは、ベトナムの石油の鉱区で、かなり石油の開発をやっているところで、赤は中国がアメリカ資本を導入して石油の鉱区を設けたということで、意図的に石油とシーレーンを見て、ベトナムに威圧を加えるという形で、まずここに出て来たわけです。

 

10:中華人民共和国の領土を示す主権碑を建てる

 

そのとき、どういうやり方で中国が出て来たかということですが、これもある程度おなじみになっていますが、高足屋と言っています [写真] 。鉄のパイプにアンペラを張り付けたという南洋の人の住んでいる家を連想すればいいと思いますが、ここに中華人民共和国の領土を示す主権碑を建てる。そこで掘建て小屋をつくって、生活して頑張る。ここにいるのは海軍の人間です。民間人を装っているだけの話で、海軍がやっているということは、中国側の新聞を見ていれば出てくるわけです。この珊瑚礁は、このあたりが波打ち際ですから、かなり大きなリーフの一角です。そういうことをやると同時に、次の写真です。これはフィリピンであってベトナムではありませんが、ベトナムの方にはあまりいい写真がないので説明のためにこれを使います [写真] 。これはプレハブのような形で建っている。こちらで実際の仕事をして、こちらは居住施設である。こちらは裸でいれば、風通しがいいから。こちらでは発電もやって、何らかの近代的な施設もあるだろうということです。そういうことをやっているうちに瞬く間にこういうものを作りあげるわけです。二、三年でつくりあげているのですね。これは一角で、これを6ヶ所でつくっているのでいろいろなタイプがありますが、こういうことをやっている。

 

 

 

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