そうすると遠州灘沿岸は冷水渦の北側に当るため、反時計回りの流れに伴って沖合から高温水が流れてきて、普段より急に水温が上がります。そうすると、魚は普段の水温を求めて移動しますから、獲れていた魚がパッタリ獲れなくなったり、びっくりするような魚が回遊してきたりします。それだけではなく、この大冷水塊が現れると遠州灘沿岸地方や海上沖合のかなり広い地域にわたって、天気が変動します。現れる季節にもよりますが、海上海岸では濃霧が発生し易くなり、移動性高気圧が通る時は、遠州灘付近に前線が発生し、曇りや小雨になる確率が高くなります。低気圧が遠州灘付近を通れば特に荒れるので注意が必要になります。
★衛星から海を測る
気象庁の気象研究所に海洋研究部というのがあります。ここでは波の予想に使われる波浪予報の数値計算式の開発とか、海洋変動のシュミレーション方式の研究などから、人工衛星によるリモートセンシングの研究が行なわれています。衛星からの測定は主にマイクロ波を使った放射計が使われています。平成四年にアメリカ・フランス共同で打ち上げた、TOPEX/POSEIDON衛星のマイクロ波高度計のデータを使って、海面の精密な高さを求める方法を開発(太平洋熱帯海域における水位変動及び絶対水位算出に関する研究―気象研究所・平成八年)しました。その成果の一部を[第五図]に掲げます。一〇センチのオーダーで描き出された海面高度差図から、黒潮の流れとその南北に散らばる海の高・低気圧の姿が表現されています。
[第五図] TOPEX/POSEIDON衛星のマイクロ波高度計から求めた、
1996年5月17日の日本近海海面力学高度の分布図(10cm毎)
また海洋観測船による精密観測や、定置ブイ・漂流ブイ、ボランティア船による水温観測などの蓄積資料と、衛星観測の連続的海面観測等を、立体的に総合処理して、力学モデルに取り入れ、シュミレートしたのが[第六図]です。深さ約百メートルの黒潮の流れる姿が驚くほど見事です。
[第六図] 観測と計算による、推進115mの流速分布図
(月平均の風向風速・衛星マイクロ波高度計・観測水温、塩分のモデル化などをバランス総合して計算)
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