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[第三図] 海水温と塩分の深さによる変化(本州南方の鳥島北100km、東海大学海洋部観測)

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一方塩分は大きな変化はしませんが、八百メートルから深くなるにつれ少しですが増えています。そしてこの図よりさらに深く二千メートルくらいまでは水温は少しずつ下がってゆき、一度〜二度になりますが、さらに三千メートル〜四千メートル以下になると水温は上昇し始めます。これは水圧が高いためにそこの水温が高くなる現象です。

さて南極の付近では海面が冷やされ、密度が大きくなって下へ沈み込み海底に溜まります。また冷たい海が凍る時に、塩分を外に出すので凍った海の海水は塩分が非常に濃くなり、海水密度が高くなります。このようにして出来た重くて冷たい海水を南極低層水といいます。この他に、北大西洋深層水がノルウェー海から流れて来ます。これらの深層水はやがて合流して南大西洋から南極環流に乗ってインド洋や太平洋へと海溝を這うように流れて行きます。その様子を[第四図]に示しました。こういった深層流は、冷えて海面から沈み込んでしまうと、はじめに含んでいた酸素を消費するだけなので、その酸素濃度は古い海水ほど低くなります。従って海水の酸素濃度から海水の古さ、すなわち海面から沈み込んでからどれくらい経っているかが判ります。

 

[第四図] 世界の三次元海洋循環の模式図

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こうして調べた結果、世界中で最も古い海水は、北太平洋の北東海域の中層に集まっており、その年齢は千五百年から二千年であることが判りました。その海水はグリーンランド沖で沈み込み、深く潜行して遙々と辿り着いた海水で、ここから再出発してゆきます。

 

★海洋の高気圧と低気圧

ここでいう高気圧・低気圧は全て海水の中に出来るものです。海の中の冷水塊が低気圧で北半球では反時計回りに渦巻く流れを伴い、暖水塊が高気圧で時計回りの渦を伴います。(気象と同じ)さてもう一度[第一図]に戻って、図中で黒潮本流の南側と北側に暖・寒で示したのが、それぞれ暖水塊・寒水塊です。暖水塊は時計回り、寒水塊は反時計回りの流れを伴っております。そして面白いことに冷水塊(低気圧)の中心の海面の高さは、まわりよりも〇.五メートルから一メートルも水位が低いことが観測されています。冷水塊ですからその中心域ではまわりの水より重く、それで低く落ち込んでいるものと思われます。中部地方に関連した海の高・低気圧即ち暖水塊と冷水塊については、黒潮の流れに伴ってできるもののうち遠州灘沖の大冷水塊が有名です。この大冷水塊については、黒潮が大蛇行をしているときだけ現れますが、一旦現れると、付近沿岸の水温分布が大きく変わるので、非常に注目されてきました。黒潮が大蛇行を始めると[第二図]の? のコースになり[第一図]の遠州沖の? の位置に冷水塊が現れます。

 

 

 

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