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(4) 油回収作業の効率性及び合理性に関する問題

ナホトカ号事故の災害ボランティア活動における油回収に関する作業主体は、マンパワーによる人海戦術そのものであった。当該作業を効率性もしくは合理性という視点から考える必要はないのであろうか。

一例を挙げる。マンパワーによる人海戦術を作業主体とした油回収活動は、行政や関係機関等による機械的回収等が行き届かない場所において効を制すものである。したがって、機械的回収が可能な場所での活動は非合理的であるとも言える。

他の例を挙げる。重油の回収量は必ずしもボランティアの人数に比例しない。作業場所のスペース、作業に参加するボランティアの数や労力、作業場所に存在する重油の量等のバランスが重要である。むしろ、いたずらにボランティアを一個所の現場に集中させることによって、かえって作業効率の低下を招くおそれがある。

一般論として、「そもそもボランティアによる活動は、自己の責任と意志に基づく社会奉仕精神の現れである。災害ボランティア活動に関していえば、行政や専門機関の行う活動の中で採算の合わない部分に関し、社会奉仕の精神に基づきボランティアによる活動が補完するものである。したがって、ボランティア自身が何らかの社会貢献ができたことを確認さえできればよい。作業の効率性や合理性については一切考える必要はない」との考えがある

その一方で、「災害ボランティア活動に関しては、単に参加することに意義があるという図式は当てはまらない。自己の責任と意思に基づく社会奉仕活動といえども、作業の効率化もしくは合理化の追求は怠るべきではない。作業の効率化や合理化は、ボランティア自身の安全や健康の確保にも直結する話なのである」との考えもあろう。

どちらが正論かは別問題として、仮に災害ボランティア活動において油回収方法の効率性や合理性の追求が必要であり、かつ、ナホトカ号事故ではその追求が不十分であったとする。

その解決方法は、既に述べてきたような1]油回収活動に関する専門職ボランティアの育成、2]ボランティアコーディネーターに対する油回収専門知識・技術等の移転、3]油防除専門家による災害ボランティア活動の支援などであると思われる。

 

 

 

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