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(3) 非組織型ボランティアの組織化問題

ナホトカ号事故においては、「三国方式」にせよ福井・石川両県によるボランティア対応にせよ、「個人ボランティア」及び「団体ボランティア」が、地方公共団体(地方公共団体が設立した専門機関等を含む)、社会福祉協議会、青年会議所、民間のボランティア団体等、あるいはそれらの複合組織によるコーディネートのもと、「組織型ボランティア」として一体化した上で災害ボランティア活動に従事した。

災害ボランティア活動を円滑かつ効果的に、また安全に実施するためには、ボランティアコーディネーターによる側面・後方支援のもと、ボランティアの組織化が必要不可欠な要素であったと言える。

その一方で、ナホトカ号事故の際、こうした組織に加わらなかった「個人ボランティア」及び「団体ボランティア」が、「非組織型ボランティア」として独自の活動を行っていたことも紛れもない事実である。

確かに、ナホトカ号事故での災害ボランティア活動における油回収方法の主体は、マンパワーによる人海戦術であった。したがって、ボランティアが各々の判断で独自の活動を行っても、全体としての結果は一緒であるとの考え方もあろう。また、そもそもボランティア活動とは、個人の自主性に基づく活動であるとも言える。

しかしながら、少なくとも災害ボランティア活動に関しては、その図式を直接当てはめることは適切でないのではなかろうか。

すなわち、ナホトカ号事故の際の油回収活動は、マンパワーによる人海戦術が主体ではあったが、他の油種及び状況下にあっては必ずしもそれが当てはまらないケースがある。例えば、状況次第によっては、安全のために油回収活動そのものへの参加を自粛し、側面・後方支援活動に廻る見極めを行わなくてはならないケースも十分にあり得る。

このような見極め一つに関しても、「組織型ボランティア」については容易にその判断及び周知が可能であっても、「非組織型ボランティア」については極めて困難を伴うこととなる。

こうしたことから、「非組織型ボランティア」の存在問題も、今後の災害ボランティア活動のあり方を考えていく上で重要な検討課題の一つであると思われる。

この問題の解決方法は、「非組織型ボランティア」をいかに「組織型ボランティア」に組み込むかに尽きる。

具体的には、前述の「情報発信システム」等の情報伝達媒体を活用し、災害ボランティア活動における組織立った活動の必要性について呼びかけを行うほか、「専門職ボランティア」の事前登録制度などを通じ、平素から油回収活動の専門性について強調しておく必要があるものと思われる。

 

 

 

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