現行の伝達システムの整備が困難な地域において、津波警報発令時に手軽にかつ広域的・効果的にその事実を知らせる方法として、船舶の法定備品として実績のある遭難信号を参考にしたロケットを打ち上げる方式が有効と考られたものです。
2] 認識伝達手法と伝達範囲
イ 音と煙の組み合わせ
メーカーでは確実なロケットの打ち上げ、上空での確実な発音弾(発煙弾)の破裂、音圧の確保などの技術的な面での開発にも苦労した模様ですが、もう一つの苦労は、前記沿岸部において何の不安も無く夢中で行動している人々に対して、全く突然に「津波警報発令」ということを認識させることができる注意喚起の方法を見出すことでした。
当初その手法としては図2のような「音の組み合わせ」のものが開発され、平成九年度事業として公開実験を行いました。(一つの黒丸は「ドーン」という一回の音)
公開実験参加者のアンケートでは「音だけの信号では、運動会などの行事や商店街の宣伝で打ち上がる花火との区別ができず、警報との認識は得られない」との意見が多く、委員会においても同様の意見が出され、第三弾目を「煙の出る弾」とすることとしました。
そのため、平成十年はメーカーで次のような改良および内部実験を行い、煙についても二、三の色や赤色についても火薬粒を変えてテストを行い完成にこぎつけました。
なお、第三弾目の「赤色煙弾の破裂タイミング」を従来の音だけの四秒一定の打ち上げ間隔から二秒だけ延ばしています。その理由は、対象者は自分の行動に集中しているため音が聞こえて初めて上空を見上げることになりますが、発煙弾も四秒の時間差ですと三〜四キロメートルも離れている場所では第一弾、第二弾の破裂音(音の伝達は340m/s)に気がついて何だろうと上空を見ても、その時には第三弾目の煙はすでに薄れていて異常性に気が付かなくなってしまうからです。
ロ 音・発煙による伝達基準
本システムの性能基準としては、発音弾破裂の直下では打上者などが耳の鼓膜を傷めない130dB以下の音圧および打上地点から五キロメートル離れた地点では対象者に音が確実に聞こえる音圧80dB以上であることを目指し、音についてはその基準を満足できました。しかし、赤色煙を採用したため、実験の結果五キロメートル地点では赤色煙が小さく見えたことから
視認距離としては四キロメートルを基準とすることが妥当との意見が多く、本システムの「警報伝達有効半径を四キロメートル」としました。
ハ 信号弾
発音弾の構造は図3のとおりです。なお、発炎信号弾の方はこの図の「発音筒」の部分が「発煙筒」となっています。
有効期限は製造後三年となっています。
ニ 打上装置
打上装置は図4のとおりです。保管時には打上げの順番に三本セットで収められています。
この打上装置は、運搬に便利なようにトランク型となっており、かつふたの部分に工夫が凝らされ、発射時に打上装置が倒れないような支えの役目を果たすようになっています。
ホ 打ち上げ操作
ケーブル式遠隔操作盤の押しボタンを押すと同時に第一弾を発射し、続いて自動的にセットされた時間間隔で第二弾、第三弾を発射します。
なお本システムの発射などの取扱者については、火薬類取締法などによる資格の必要はありません。