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この比較実験には、気象庁、気象研究所を含め各国一一機関、一四種類の数値予報モデルが参加し、次に述べるように、水平格子間隔(以下では単に「格子間隔」とする)や、初期値の種類を変えるなど、多くの実験を行いました。

 

図2 1990年台風19号の径路

印は6時間おきの解析位置で、大きな印が00および12UTC(協定世界時)に対応。

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格子間隔による予測精度の向上

 

数値予報モデルでは大気中に三次元の格子を組み、格子が交差する位置(格子点)における気象要素の大きさを数値で表します。隣り合う二つの格子点の間隔を格子間隔と呼びます。比較実験では各モデルの格子間隔を五〇キロメートルと二〇キロメートルに変えて実験が行われました。この結果、格子間隔を小さくすると台風発達の予測精度が改善することがわかりました。台風の目の直径は数十キロメートル程度、暴風半径は一〇〇〜三〇〇キロメートル程度なので、台風の中心付近の細かい構造を再現するためには、格子間隔をそれに見合うような大きさにしておく必要があります。図3は、気象庁とある参加国のモデルについて、格子間隔を五〇キロメートルおよび二〇キロメートルに変えた場合の中心気圧の予想結果を比較したものです。現在の気象庁の台風モデルの格子間隔はほぼ五〇キロメートル程度ですが、現段階の技術でこれを二〇キロメートルまで細かくすることで、誤差をかなり小さくすることが期待できます。しかし、格子間隔が二〇キロメートルでもモデルによっては台風発達の予測があまり向上しないものもあり、台風の強さの予測向上には、格子間隔を小さくすることだけでは十分ではないということがわかります。

 

図3 格子間隔の違いによる台風中心気圧の予測結果

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