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海賊旗

 

「黒地に白いドクロの大腿骨のぶっ違い」は典型的なジョリーロジャー(海賊旗)のデザインだが、フランス語で血の色を指すジョリー・ルージュ(嫌らしい紅)から英語に転化した呼び名だという。海賊旗を最初にひるがえしたのはフランス人海賊ウインヌで「大腿骨のぶっ違い」の中心にドクロを置き、その下方に砂時計を配してあったが、砂時計は獲物に対する脅迫を意味した。海賊によってそのデザインはさまざまで、がい骨そのものや海賊自身がドクロの上に立つ姿もあり、黒地が主流ではあるが、深紅にしたものもあった。一八世紀はじめ約二、三〇年の間、西インド諸島に限っての話である。今世紀、両次の大戦で、戦果を挙げて母港へ帰るイギリス潜水艦は誇らかに海賊旗を掲げたという。

 

海賊のトリック

 

海賊船が獲物を襲うとき、相手船に接近して乗り移るまで、それと悟られないようカムフラージュするのが常套手段だった。あるときは難破した漁船に見せかけて相手をおびき寄せ、またあるときはどこかの国旗を掲げて近づき、ここぞという段になるとその偽国旗を引き降ろすやいなや黒い海賊旗を上げたので狙われた商船はお手上げだった。ただし、中には軍艦を商船と間違えて接近し、あべこべにやっつけられたという話もある。

また、一六世紀、南米沿岸の太平洋で、イギリス人ドレークが、自船の速力がいかにも遅いように見せるため、満帆で走りながらロープでつないだ空樽を船尾から曳航し、油断した先行のスペイン船がわざわざ近づいてきたのを急襲して巨額の財宝を略奪した話は有名である。

杉浦昭典氏著「海の昔ばなし」から引用

 

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