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監禁中の生活

 

本誌 監禁中の食事はどうでしたか。

池野 老朽船で六日間の監禁中の食事は、最初はスープ皿にご飯を盛ってその上に干し魚が一つのっていました。二回目はご飯の上に骨つきの鳥の空揚げが一つのっていました。そのあとはほとんどがご飯の上に水気の少ないラーメンの様なものがのっているものでした。

 

図 襲撃から救助まで

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本誌 量は足りましたか。

池野 ほとんど寝ているような状態でいたので、お腹が空かず十分でした。

本誌 食事中は目隠しはとってくれたのですか。

池野 目隠しされたままでの食事でした。両手が一つに縛られていたので大変食べにくいのです。床や膝の上において両手でスプーンを口に運ぶといった案配で、美味しくもないし、食べたくもないという者もいましたが、体力維持のために食べるだけ食べなさいとすすめました。こういう食事が朝夕一日二回でした。目隠しのテープが汗でずれたので見えましたが、水は、五〇〇cc入りのミネラルウォーターが出てきて、馬鹿にいい水をもってくるなあと思ったのですが、直ぐ濁った水に変わりました。これで腹痛を起こすのではと心配しましたが、湯沸かしをやっているようで、熱いのも冷たいのもあると言われ、それぞれが好きな方をもらって飲みました。幸い食事と水で腹痛になったり、下痢をする者は出ませんでした。

本誌 トイレはどうしましたか。

池野 目隠しと手を縛られた状態で見張りが付き添ってトイレにいきました。

本誌 船長と機関長は、監禁中話ができたのですか。

池野 機関長とは同じ部屋でしたが、話すと見張りが怒るのでほとんど話せませんでした。

本誌 海賊に英語は通じましたか。

池野 単語を並べる程度でした。

本誌 海賊に抵抗する手段はなかったですか。

池野 私も映画で見たようにかっこよくやりたいとは思いましたが、武器もなく、他の乗組員との打合せもできないので、殺されるようなことがないのであれば抵抗しない方が安全だと考えました。

 

外との連絡手段

 

本誌 このような事態に際して、外に向けての連絡手段についてどう考えますか。

池野 われわれのできることとしては、イパーブ(衛星非常用位置指示無線標識)のスイッチを入れるとか、VHF(超短波無線装置)でしゃべるとか、インマルサット(国際海事衛星機構)のテレックスで送るなどが考えられますが、そのチャンスがあるかないかということです。今回の場合は、海賊が船橋まで入ってきて気が付いたということで、とても時間的余裕はなかったです。また、それらの通信手段を相手は知っていて、乗ってくると押さえてしまうのです。

本誌 海賊は船の通信手段をよく知っているということですか。

池野 そう思います。後から聞いたのですが、一等航海士がテレックスに詳しい人で、ボタンさえ押せばクアラルンプールに連絡がいくように事前にセットしていたのです。

 

 

 

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