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II-3 化学的油防除資機材の性能調査

 

II-3-1 油ゲル化剤のゲル化性能

 

現在我が国には、液体油ゲル化剤の性能試験法として、排出油防除資機材の性能基準(昭和59年2月1日舶査第52号)に定める油ゲル化剤性能基準及び粉末油ゲル化剤の性能試験法として粉末油ゲル化剤の型式承認試験基準(平成7年11月30日海査第635号)(以下「現行のゲル化性能試験」という。)があるが、試験油として粘度の低いB重油(舶査第52号は30℃における動粘度が50cSt以下、海査第635号は50℃における動粘度が15〜30cSt)を使用していることから、中高粘度化した海上流出油に対するゲル化性能について十分把握されているとはいえず、中高粘度油に対する液体ゲル化剤及び粉末ゲル化剤のゲル化性能の調査とともに、試験方法についての検討を行った。

 

1 現行のゲル化性能試験による中高粘度油のゲル化性能

 

平成9年度の調査において、現行のゲル化性能試験による中高粘度油のゲル化性能調査を、試験油をC重油(500cStまたは3,000cSt)とし、散布率を10%から30%の範囲で変化させて実施した。

調査の結果は以下のとおりであり、現行のゲル化性能試験は中高粘度油のゲル化率を求める試験法として適さないことが分かった。

(1) 液体油ゲル化剤

1) 容器内の人工海水面に試験油を投入すると粘度が高いためレンズ状の油膜が形成し、この油膜上に液体油ゲル化剤をピペットで滴下すると液体油ゲル化剤の一部は油面上から滑落し海面に流れる。

2) 海面に流れた液体油ゲル化剤は極性溶媒の水と水素結合し液体油ゲル化剤自身が凝固し、この状態で水平振どう機を振とうしても高粘度油はほとんどゲル化しない。

3) 容器内の内容物をステンレス製ふるい(標準ふるい1.68mm)上に注ぐと、網目は液体油ゲル化剤自身の凝固物で目詰まりし、他の内容物の通過を妨げ、また、試験油がふるい上にあり網目を通して落下しないことが分かった。

(2) 粉末油ゲル化剤

1) 形成されたレンズ状の油膜の上に粉末油ゲル化剤を散布すると油面に接触した粉末油ゲル化剤のみが膨潤し、油膜の表面だけがゲル化する。このためゲル化した上の粉末油ゲル化剤は、油との会合を遮断された。このことは、油の比重等が粉末油ゲル化剤よりはるかに重いため油層全体にゲル化剤が侵入できないことによる。

2) 容器の内容物については、液体油ゲル化剤と同じ状況であり、ステンレス製ふるいに注ぐ際に容器の内面に未ゲル化の試験油の一部が付着し、その分のゲル化率が高い結果を示すこととなる。

 

 

 

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