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ただ経済発展の非常に未熟な段階においては、独裁的な政治体制というのは効果的である可能性を示唆した例ともみることができます。しかし独裁的な政治は得てして、独裁者が個人の利益のために走ってしまうケースもあり、どんなクリーンな人が独裁しているかが非常に重要な意味を持ってくるかと思います。

今後のパキスタンについて、少し触れたいと思います。経済面では、様々な問題があります。経済の安定化、海外の投資家の信任を回復、民営化の推進、貧困の撲滅、それから財政赤字の縮小や対外債務の縮小など、多くのことが重要なアジェンダとして挙げられるのですが、これはずっと指摘され続けている問題であり、民主化移行までのムシャラフ氏の任期中に、2年ぐらいと予想されていますが、その間にこれらの問題を解決することは無理であって、ムシャラフ政権がどこまで問題解決を行っていくことができるかに注目しております。

対インド関係に関しては、国内の政治的、経済問題が山積みである現在において、パキスタンの方がインドに対して攻撃的姿勢をとるということは考えられないかと思います。かといってカシミールに関して大幅の譲歩はあるかというと、そういったものはないかと思います。

対インドの経済的な関係については、改善の余地は大きいものがあります。インドとパキスタンの貿易額は全体の2.5%ほどしかないのですが、いわゆる闇の部分で、年間500億とか、1,000億ルピーを超える額が取り引きされているようで、潜在的な関係は非常に大きいと言えます。経済的な協調が南アジアの地域連合を中心に行われることを期待しています。ただし、インドというのは、現在南アジアとの協調よりも、どちらかというとASEANの方に目がいっており、またパキスタンも南アジアとの協調よりも、サウジアラビアやクウェートといったイスラム諸国との関係強化を図っています。ですから今後のパキスタンとインドの経済関係は、経済パートナーとしてのお互いの興味のレベルによるということかと思います。

最後になりましたが対アメリカ関係ですが、これは核問題、経済援助問題それからイスラム原理主義の広がりと、3つの問題に絞られると思います。CTBTへの署名に関しては、CTBT署名即経済援助という確約が得られれば、パキスタン側としても受け入れることができると考えられます。

それからアメリカの方としても、パキスタンを孤立化させるということは絶対しないと考えられています。一つの理由は核を持っていること。それからイスラム原理主義の広がりというものが非常に脅威になっている点です。CTBTの署名が実現することになれば、若干友好的な関係が醸成されるのではと期待しております。

ちょうど時間も過ぎましたので、このあたりで終わりとさせていただきます。かなり説明を省いた箇所もありますので、ご質問していただいて、わからない点を解明していただければと思っております。どうもありがとうございました。

 

 

 

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