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それが、ICBLの正式な立ち上げが92年の10月ですから、それからわずか5年で地雷は悪である、地雷というのは悪い兵器なんだという新たな国際規範をつくりあげることに成功したわけです。

どうしてこれほど急速にICBLは世界的に支持を広げて、それまで多用されてきた兵器を全面的に禁止することができたのか。その要因をちょっと整理してみたいと思います。いくつかあるのですが、今日は7つほど挙げたいと思います。

まず、第1点ですが、ICBLは問題設定として脱イデオロギー化を図った。すなわち対人地雷の問題は、対人地雷という兵器を廃絶するわけですから、これはあくまでも軍縮なのですが、ICBLはこの問題を軍縮問題ではなくて人道問題だと位置付けました。

どうしてそうなったかといいますと、ICBLの設立メンバーが地雷被害国で直接活動するNGOだったからであります。

戦争の被害者を救済している団体は、地雷のみならず不発弾などの被害にあった人たちに救いの手を差しのべてきました。そうした人道団体は、ポリオの子供たちも含めて、義肢や車椅子といったものを提供してきました。それから地雷被害国で直接地雷の除去にあたっている団体、こういった現場で活動する人たちは、地雷という問題は地雷という兵器そのものをなくさない限り、兵器を根絶させない限り、問題は解決しないということを、現場の活動を通じて、身をもって経験したわけです。

平和運動や軍縮運動という問題の設定をしますと、活動をする団体や個人の問にイデオロギーの問題ですとか、もしくは思想といった問題に触れまして、対立が生じかねないということがあります。これは例えば、戦後の核軍縮運動をみても明らかですが、ICBLの場合には問題をあえて軍縮問題とせず、人道問題としたことによって多くの幅広い人たちの支持を得ることができました。対人地雷という問題は人道問題に反するという普遍的な問題設定をすることによって、誰しも無視できない問題ということに引き上げることができたわけです。

ですから、6団体で正式に旗揚げしたネットワークが、急速に輪を広げまして、人権、環境、女性問題、開発、難民といったさまざまな分野で活動するNGOですとか個人を巻き込んでいくことができたわけです。そして、地雷には普通関心がない国、もしくは被害にあっていない国、日本や欧米諸国のほとんどが含まれるわけですが、こういった国々の人々やメディアの関心を集めることができました。それは、先ほど申し上げたように、人道問題だと位置付けたからにほかなりません。

 

 

 

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