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第2番目の特徴としましては、ICBLには分野を越えた専門知識の集積があった点が挙げられます。先ほど申し上げたように、ネットワークは支持の輪を広げるにあたって、人道問題のみならず、さまざまな問題に取り組む市民社会の活動家、それから団体を擁するようになってくるわけです。加盟団体が増えてきますと当然ですが、それぞれがもっている専門性というものが発揮されるようになりました。

例えば、医療問題を専門にするNGOは「国境なき医師団」ですとか、さまざまな団体が医療問題に特化して活動しているわけですが、こういった団体は地雷がもたらす恒久的な身体障害についてその悲惨さを訴えました。それから子供の問題に特化したNGOは、地雷の被害者というのは実は非戦闘員であり、そのなかには多くの子供たちが含まれているという問題を指摘し、子供の問題にかかわっているNGOのコミュニティーに対して、地雷の問題を訴えたわけです。そして、例えば人権問題に特化している団体というのは、非戦闘員、一般の市民が犠牲になっているということから、基本的に人権侵害であるというふうに訴えました。

そして、徐々に軍事問題に特化したNGOなどもこのネットワークに含まれてくるようになったわけですが、そうしましたら過去の戦闘資料、例えばベトナムですとか朝鮮戦争の資料から、対人地雷という兵器が実は軍事的にあまり有効でないものであるという点を指摘しました。と申しますのも、ベトナム戦争時、米兵の最大の被害というのは、自分たちのまいたアメリカの地雷によって被害に遭っているわけですから、地雷というものは有効である以上に被害が大きいという点を指摘しました。オスロ会議の最後、地雷条約交渉が暗礁に乗り上げた時点で、米国が朝鮮半島において地雷を使い続ける必要があるんだということを説いたわけですが、軍事問題に特化したNGOがそういった議論は無効であるということを論証しようとしました。

NGO自らにも、冷戦後に大きな変化が起きています。これは多くの欧米のNGO自ら認めるところですが、冷戦時代というのは基本的にNGOは政府に対して、数で対抗していた。例えば平和運動でしたら、マーチやもしくはデモンストレーションという形で何万人、何十万人という人が繰り出した。そういう格好で、政府に対して数で、マスで対応してきたということがあります。

 

 

 

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