日本財団 図書館


このように、ICBLは非常に実体のつかみにくい側面を持っているわけです。しかし、ICBLはトランスナショナル・シビルソサエティーの象徴的な事例であることは間違いありません。そこで、ここではICBLについて少々ご説明したうえで、トランスナショナル・シビルソサエティーについてお話したいと思います。

まず、ICBLの特徴ですが、今日では世界の70カ国以上から千数百の団体が加盟するといわれております。ICBLというネットワークは、そもそも1992年の秋に大西洋を挟んだアメリカとドイツのNGOが始めた活動が出発点でした。その後、欧米の6つのNGOが正式にICBLを発足させまして、急速に世界で支持を集めるに至りました。そして、その後ICBLという世界の市民社会の連合体は、対人地雷を全面的に禁止しようとする積極的な国々と協力して、条約にこぎつけたというわけです。

このトランスナショナル・シビルソサエティーと中堅国が協力して全面禁止条約を成立させた過程が、通称オタワ・プロセスと呼ばれているものです。なぜオタワ・プロセスと呼ばれているのか。それは1996年の10月にカナダの首都オタワで地雷の国際会議がございまして、その席上カナダのアクスワージー外相が翌年97年の12月に条約を調印しましょうということを宣言したわけです。それから96年の10月から97年の12月までおよそ1年2カ月にわたって、市民社会と中堅国といわれている南アフリカ、カナダ、オランダ、ドイツ、ノルウェーといった国々とが協力して、条約を成立させたわけです。

1997年の12月にオタワで調印式が行われまして、その際に122カ国が署名しました。その後は条約を発効させるのに必要な40カ国が次々に批准をいたしまして、今年3月1日に条約が発効しました。4月23日現在で、署名は135カ国、そして批准は75カ国に達しています。

ICBLがキャンペーンを立ち上げ、世界に問題提起するまでに、実は対人地雷という兵器は世界70カ国以上で使用され、日本を含め多くの先進国も保有していたわけです。現在でも日本は保有しております。ごく平凡な兵器で、核兵器とか化学生物兵器といった特殊な兵器とは異なり、全く問題視されていなかったというのが現実です。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION