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今回のワールド・エコノミック・フォーラムの1つの中心テーマは、「レスポンシブル・グローバリティ」、つまり責任あるグローバル化というキャッチフレーズではなかったかというふうに思います。実は私の知る限りアメリカのメインストリームのエコノミストたち、経済学者たちも市場メカニズムの役割を非常に強調しながらも、同時に今の行き過ぎた急激な資本移動等々に対しては、やはり何らかの枠組みが必要なのではないだろうかという議論をしています。今日のファンダーバークさんのお話はアメリカの経済、政策についてのお話ですが、この今の資本主義そのものをどのように捉えるかという少し大きな視点からコメントいただければ、大変我々の参考になるのではないかというふうに思いました。

第3の点は、実は政策の対立軸が一体日本とアメリカでどのように変化しているのかについて考えると、どうも奇妙なポイントに行き着きます。これは日本の問題点なのですが、先ほど申し上げましたように経済戦略会議ではかなりはっきりと小さな政府という考え方を打ち出して、共和党的な政策提言を行った。実はこの政策を一番評価してくれているのは自由党であります。自民党はあまり評価していないようです。また、民主党の人たちも評価してくれているようです。つまり申し上げたいのは日本における政策の対立軸というのがはっきりと見えないという問題があるということです。経済戦略会議では共和党的な政策を出したのですが、ただセーフティーネットを重視したような政策の対立軸というのは日本にはありません。

どうも考えてみると、アメリカにも日本に似たような問題があるのではないでしょうか。例えば先ほどクリントンは共和党の政策を採ったとファンダーバークさんが言われました。確か一時期はこれについては「政策のハイジャック」という言葉が使われたことがあったと思いますが、とにかく、共和党の政策も民主党の政策もどうも基本的には似ているのではないでしょうか。これからの当面のアメリカの政策運営にあたって、どこが対立点であるというふうに我々日本人は考えたらよいのでしょうか。もちろん議会のなかでは対立はあるかもしれませんが、少し大きくマクロ的に捉えた場合の対立点というのは一体どこにあるのか。これは日本についてもアメリカについても同じような不明確さがあるのではないかと思いました。

第4は、これは質問としてお尋ねします。今のような経済の状況下で、アメリカ経済は今年少しやはり減速せざるを得ないのではないでしょうか。一方で日本の経済はなかなかよくならない。

 

 

 

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