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これは別の言い方をすると、さきほどのお話のなかにも少し言葉としては出てきましたけれども、社会のセーフティーネットのあり方をどのように考えるのかという点に帰着するのではないかと思います。

ちょっと話が前後しますが、アメリカにはCEA、カウンシル・オブ・エコノミック・アドバイザーズという組織がありますが、それに近いものを意識してこの半年間日本でも経済戦略会議というのが小渕首相に対する諮問機関として運営され、我々がそこで提言した考え方というのは、基本的にはさきほど吉原さんが言われたように、共和党の経済政策に非常に近いものになっていると思います。そのなかでセーフティーネットをどのように構築すべきかということは、我々にとって大変大きな問題であったわけですが、経済戦略会議では1つの考え方として、「自分の能力、人的資源こそが最大の安心の拠り所である」と、最大のセーフティーネットであるというふうな考え方をとりました。そこで、共和党のメインストリームの人たちはそういうセーフティーネットをどのように位置づけるかという点についてぜひお尋ねしたいというふうに思います。

では、第2のポイントについてお話します。アメリカがその小さな政府で成功したということは非常に明らかだと思いますが、一方で世界を見渡してみますと、例えばヨーロッパの国のほとんどが実は社会民主主義を掲げる政党がこれを支配しているという状況になっているようです。これは一国の体制の選択でありますから、それは国民の選択である、といわれればそのとおりですが、しかしこういった考え方の対立というのが、アジアの経済危機をめぐってどのような政策を採るべきかという点に関しても経済政策上の対立を生んでいるということも間違いないのではないかと思います。

アジア危機についてはIMFがリーダーシップをとっています。このIMFのポリシーは非常にアメリカの共和党的な考え方を反映しているように思えます、またワシントン・コンセンサスと呼ばれる考え方を反映していると思います。つまり、徹底的に自由化を行って小さな政府を作れというポリシーをとっているのです。しかし、そういったIMF的な処方箋がアジアの国々では必ずしもうまく成功していないということをめぐって、こういう小さな政府、自由競争を重視する政策そのものに対する疑問が一方で出されているということも事実ではないかと思います。

2週間前にスイスのダボスでワールド・エコノミック・フォーラムという会議がありました。

 

 

 

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