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要するに、例えビジョンは決まっていてもなかなかそういう行動に走れず、今後2、3年間社会の動きをみながら、それの代替的なもの、例えば店舗の半分をクリーニング屋に貸すとかコンビニに貸すとか、そういうことでもやらないと一向に採算が上がらないのです。

私が心配しているのは、個人業務というのはそのうちに儲かるだろうという業務ではなく、今ちゃんと改革をしない限りそれも定かではないし、5年経っても全くほとんど利益は出ませんでした、ROAは上がりませんでしたということにもなりかねないということです。ある大手銀行の担当者は、「ゼロからスタートしたほうがよっぽど儲かる」とおっしゃっていました。「つまりどういうことですか」と言うと、「オリックスが身軽なコスト構造で参入してくるとか、あるいは外資が低コストのインターネットバンキングを通じて参入してくる。そっちのほうがよっぽど儲かって、我々もそうしたいぐらいです」とおっしゃるわけです。

やはりあれだけ巨大な組織とか、社会にあれだけ関与している組織を変えるというのは並大抵ではないわけですから、危機感に対する怠慢と社会的ないろいろな問題とか産業構造上の問題などが今のように絡み合いますと、日本の銀行というのは、アメリカの銀行、あるいはヨーロッパの銀行と同じような動きができないと思います。ですから、健全化計画で出している利益見込みというのは、実はかなりの部分が利鞘の改善に依存していますが、あれさえもなかな到達できないうえに、5年かかって結局何も変わっていなかったということが、銀行の内部では起こり得るのではないかが非常に気掛かりなのです。

一方では、すでに触れましたように、オリックスなり、ほかの外資とか、あるいはトヨタですとか商社ですとか、いろいろなところが身軽な別会社をつくって、どんどん参入してくるといったことがありそうです。銀行については確かに手数料が自由化されてゼロに近くなるということもなかなかないわけですから、手数料率を急激に引き上げて挑戦してくるという脅威はないかもしれませんが。

インターネットバンキングで顧客基盤を急速に拡大した松井証券はアメリカ型の経営を持ち込んで、相当な自信をもって経営していますよね。今回委託手数料を4分の1にし、そして3年後にはゼロにすると主張しています。ほとんど宣言しています。ゼロするというのはどういうことかというと、本当にそれがインターネットの世界だけではなくて、全体の世界で起こるとなると、大手の証券会社が理論的には赤字の収益構造をもつことを意味します。野村も大和も今はインターネットブローキングに入ってきているということは、それなりの危機感を感じているのだと思います。

 

 

 

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