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確かに今が移行期ということで仕方がない部分があります。それでもやはりそこに若干怠慢というか、経営者の勇気ある決断みたいなものがないというのがまず1つ指摘されるべき懸念であると思います。それから、もう1つは例え決断があったとしても、恐らくできないこともあるだろうということで、これはもう政治のほうのいろいろなインフラづくりというものとか、あるいは国民への教育というものがないと、恐らくできないことだと思います。

どの銀行にとっても個人業務の再構築は並大抵のことではありません。健全化計画にはどの銀行も個人業務が稼ぐ業務純益を300〜500億円の黒字と報告していますが、経費をどこに割り振るかにより、黒字は赤字になる可能性が高いのです。多分、逆に数百億円の赤字というのが実態だと思います。さて、何が赤字の原因かといえば、通常300ヵ所程度ある支店での業務の大半が不採算であるからです。また、支店の外になるATMも、採算の高い取引をしない若年層の預金者の利用頻度が高いことで、意外にも赤字を生み出しているようです。では、どうすれば黒字になるかといえば、まずは経費レベルを落とすために、不採算な店舗を即時に閉めるとか、取引採算に合わない給料を大幅に引き下げるとか、割に合わない業務を取り扱わないとかすればいいことになります。では実行可能かといえば、どれ一つとっても現状で実行することは、社会的、政治的な批判が強く不可能なことばかりです。

個人業務に充当している従業員数は大手銀行で5000〜6000人だと思います。そのうち、おそらく半数の削減が必要ということになるでしょう。また、残り2000〜3000人のうち、個人業務の経験があるのは、正社員というより以前銀行に勤めていたことのあるパートの人材だったりします。あとの2000人程度の人材はむしろ未経験者であると考えられ、個人業務のノウハウの再教育が必要であるというのが実情でしょう。再教育には膨大な時間とコストがかかります。

しかも、5千人を2千人に削減したからといって、店舗も5分の2にできるかというとできません。どんどん店舗を廃止しようかと思っても、公金を扱っているとか、住民の方がいろいろな取引をわざわざ店舗にきてやるということで、それを廃止すると、地方公共団体からの苦情などもあってできない。それから公金の取り扱いというのは、フォーマットがいろいろ違いますから、全部コンピュータに任せることもできず、一応手作業になるので、それなりにそこに人を置かなければいけないわけです。

 

 

 

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