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それでもアカの他人同士の生活が無事収まっている、その秘訣を探っていくと、どうやら彼女の資質に負うところが多いように見受けました。

要するに彼女がキーマン、つまり軸になっているのです。一見、六名がそれぞれ勝手にふれあえばいいように見えますが、現実的にはそうはいかないのかもしれません。結局はOさんが軸になって(またはOさんを通じて)他の五名がふれあっているらしいのです。

痴呆老人のためのグループホームも流行中ですが、今三名の痴呆老人と一緒に生活している私の知人にキーマンの話をしたら「そういえば私もそのキーマンなのかも」と言っていました。

地域で高齢者たちが寄り集まる家(本連載でも栃木県足尾町の事例を紹介しました)でも、その家のあるじがふれあいの軸になっています。それぞれのホストの人柄や性格と合う人が近寄ってきているのです。

福井県永平寺町のある民生委員が担当地区で高齢者のたまり場を数件見つけましたが、やはりホスト役にそれぞれ特徴があり、それに合う人が来ていることに気付いたと言っています。

相手の相談に気軽に乗れる面倒見のいい人、料理・手芸などを教えてくれる人、多数の人が慕い寄る人望家、ふれあいや話し合いを仕掛けてうまくまとめる人、みんなの聞き役に徹する人、みんなに上手に助けられている人などなど。「作られた近隣」を観察することで、近隣助け合いのコツ(のいくつか)が見えてくるのです。

 

近隣型助け合いとは…?

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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