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当世高齢事情 No.12

 

社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか?

 

母のお金を兄が…

回答者 清水勇男

蒲田公証役場・公証人

 

Q 四年前、田舎で一人住まいをしていた八三歳の母が脳梗塞で倒れました。もう一人住まいは無理なので、兄が連れて帰りましたが、兄嫁は仕事を持っていて母の面倒は見られないと言い張り、結局姉夫婦が引き取りました。姉は介護に疲れ果てています。

昨年、母の土地が売れて約二〇〇〇万円入りました。代金を受け取った兄は、三〇〇万円を母に渡しただけで、残りは自分が管理すると言い張り、母の通帳と印鑑も持って行ってしまいました。私は、この残金は姉が預かって母の生活費や療養介護費等に充て、残ったら母の面倒を見てきた姉が全部受け取るべきだと思います。ご助言をお願いします。

 

A これは親の面倒は一体誰が見るべきなのかという問題とも絡み、むずかしい問題です。

旧民法では、長男が家の財産全部を相続する権利がある代わりに親兄弟の面倒を見る義務があるという建前になっていました。ところが新民法では、それは身分による差別であるとして否定され、均分相続の時代に移りました。しかし、依然として旧民法の意識が強く、「義務は長男が、しかし権利は平等に」という理屈がまかり通っています。

あなたの頭の中にも、長男である兄が母の面倒を見るのが当然なのに、その責任を放棄し、姉に母の面倒を見させているのはおかしいという考えがあるように思われますが、いかがでしょうか。きょうだいは平等に母上の面倒を見る義務があり、ただ姉上しか母上の面倒を見られないという実情にある場合には、あなたと兄上が物心両面から姉夫婦を支えるという態勢を取るべきものと考えます。よく話し合ってみてください。

 

 

 

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