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叔母は、うつむいて黙って聞いていた。診察の結果は全く異常がなかった。医師は、施設職員の老人の扱い方の無知を批判した。人権を侵害されるようなひどい言葉で叱責、指導を受けながら6年間耐えた。

そのうち、叔母の身体機能の低下が見られるようになり、特養ホームに移るように勧められた。決まった特養ホームは、山村で面会に1日は要する遠いところだった。つくづく運の悪い人だと思ったが、入居の当日、ホームの職員がにこやかに迎え、大切にお預かりしますと言った時は、涙が出そうになった。職員の心が温かく心地よかった。心からホッとした。

この特養ホームに入ってから、一度も呼び出しや注意がなかったのは本当にありがたかった。食べ物による窒息死は注意を怠った職員の責任が問われるような事故だったが、叔母にとって好きな歌がいつも歌え、初めて穏やかな生活を送ることができた施設だったので、職員に感謝こそすれ責任を問う気持ちはなかった、と書かれていた。

追伸として最後に、最初に6年間過ごした施設で職員に激しく叱責された時、私も一緒になって叔母をなじった。叔母の孤独や悲しみに気付かず、今は深い後悔で胸が痛むとあった。

 

 

 

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