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生前には、つましい生活をして、死後に何千万円もの貯金通帳が出てきたなんていう例が珍しくないですから。そういう意味では、後見人の役割は単に財産処分など一過性のものではなく、たとえば要介護状態になればその状況に対応してお年寄りの権利を守っていく継続的な生活支援サービスなのです。

成年後見制度の実施に合わせて、日本司法書士会連合会では安田火災海上保険と提携し、後見人が被後見人の財産に損害を与えた場合などを対象にした包括補償保険を共同開発しました。

 

痴呆症のお年寄りに代わって介護契約も

 

介護保険がスタートすると、成年後見制度は具体的にどんな形で介護保険を補完し、お年寄りの権利を守ってくれるのですか。

 

たとえば、痴呆症のお年寄りが介護保険を受けようとする場合、任意後見人や法定後見人は本人や家族に代わって要介護認定の申請や訪問調査での立ち会いをして、ケアプランに同意できれば、そこで在宅サービス業者や介護施設と契約します。認定結果に不服があるときの申し立てや、介護サービスが契約通りきちんと行われているかどうかチェックするのも後見人の役割です。介護保険は高齢者とサービスを提供する業者や施設との契約によって成り立つ制度ですから、この場合は後見人が契約当事者になるわけです。

家族だけでは介護を支え切れなくなったため介護保険制度が登場しました。介護保険では自分が受けたいサービスを選択して契約しますが、それと同じように、新しい成年後見制度でも自分で後見人を選んで、あらかじめ契約しておくことができる。「自己決定、自己責任」の精神に貫かれているという点でも、二つの制度は日本の高齢社会を支える「車の両輪」だと思います。

 

 

 

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