「百年ぶりの大改革」といわれていますが、成年後見制度はこれまでの禁治産制度とどのような点が違うのですか。
たとえば、ある痴呆症のお年寄りが不動産を処分しようとした場合、そのお年寄りには判断能力がありませんから、財産管理の後見人を立てることになります。従来の民法で定められた禁治産制度では、家庭裁判所がそのお年寄りを禁治産者と宣告した上で、本人の意思にかかわりなく配偶者が後見人になることが決まっています。高齢者の場合は配偶者も相当高齢に達していることが多いので、果たして配偶者が後見人としてふさわしいかどうかなどの問題点が指摘されてきました。また、いったん禁治産と宣告されてしまうと、戸籍に記載され一生涯付いて回るので、この点もいざ制度を利用しようという時に抵抗がありました。
これらの点を改正して施行されるのが成年後見制度で、禁治産制度がはじまったのが一八九八年ですから、まさに百年ぶりの大改革ということになります。最も大きな違いは、判断能力が低下する前に本人が自分の意思で後見人を選ぶことができる「任意後見制度」を導入したことです。後見人は複数でもよく、法人でもなれます。親族らの申し立てによって家裁が後見人を選任する「法定後見制度」と併せて、この二つの制度から成るのが成年後見制度で、新制度では禁治産という用語はすべて法律から撤廃し、戸籍への記載もなくなります。
増えるお年寄りからの相談
司法書士会がもう何年も前から、この法制化を働きかけてきたと聞きました。どんなきっかけから取り組むようになったのですか。
実はお年寄りから財産管理や相続についての相談を受けるケースが、一九九五〜九六年ころから増えてきたんです。