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最初のケースは、有料老人ホームに入りたいんだが入居した後の自宅をどうしたらいいだろうか、という相談でした。不動産屋に相談を持ちかければ、じゃあ売却しましょう、ということになりかねませんが、お年寄りにしてみれば自宅は心のより所だから、残しておくに越したことはない。そこで、自宅を賃貸に出して、その賃料は本人に還元するという方法で財産管理をさせてもらったんです。お年寄りは喜びましたよ。

司法書士は土地や家屋の権利書を作成する登記屋というイメージがあるかもしれませんが(笑)、市民に身近な法律家として権利擁護や財産管理に関する事柄を契約によってきちんと"交通整理"するのが本来の仕事です。日々の仕事でこうした相談を受けるたびに、新しい後見人制度が必要だと感じてきました。高齢社会になって、一人で暮らすお年寄りや痴呆症予備軍が増えれば増えるほど、その必要性も増してくるはずだ、と。

そこで、九七年にまず私の所属している埼玉司法書士会に「ケアポート埼玉」という相談窓口を設け、相談や財産管理を引き受ける活動をはじめました。司法書士は地域に密着した法律家。都市に集中する弁護士と違って、地域の民生委員や社会福祉協議会などとネットワークを組んで活動できるというメリットがある。これは幸いでしたね。

また、社会福祉士会が応援してくれたことも、福祉や介護に門外漢のわれわれには心強かったです。

 

そういう意味では、司法の規制緩和の一つともいえますね。

 

決して弁護士に対抗して(笑)ということではなかったのですが、日々の実践が結果的に司法書士会として「成年後見大綱」をまとめ、「社団法人成年後見センター・リーガルサポート」を立ち上げることにつながっていきました。センター構想を打ち出したのが九六年、それから三年余りをかけて、相談業務と財産管理、そして海外視察の三つを活動の柱にして、法制化に向けた検討を重ねてきました。

 

 

 

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