地下鉄「浅草駅」を降りて外へ出る。墨田川の川面を渡る風が冷たい。橋を渡るとアサヒビールのビルが目の前だ。屋上にある金の炎のモニュメントが光っていた。さすが元気印の人気企業、一六階の受付ロビーは商談を待つ訪問客でごった返していた。環境文化推進部の加藤種男エグゼクティブプロデューサーを訪ねた。加藤さんは九〇年四月から同社の社会貢献活動に携わるベテラン。また経団連・社会貢献委員会担当者懇談会のメンバーとして活躍する論客でもある。
同社の社会貢献活動は、経営理念を実行するための一つの要素として位置づけられ、次のような二つの特徴的な考え方に基づいている。1]「社会」をステークホルダー(顧客・株主・社員・取引先などの利害関係者)に加えた。企業が従来より広く社会全体にかかわっていくこと。従来のステークホルダー同様「社会」へも利益還元を行い、大切にしていくこと。2]NPO(民間非営利組織)をこれからのパートナーとして重要視し、NPOセクターとのパートナーシップを強化しながら社会貢献活動を行うこと。
「NPOの存在をこれほどまでに明確に宣言する企業はなかったのではないでしょうか。企業が世の中に存在し続けたいのなら、世の中の人々に対しその存在価値を提供し認識していただかなければなりません。企業の持つ経営資源とNPOの課題解決能力を結びつければ、世の中に役に立つ新しい価値をより多く生み出していけるんではないかと期待しているんです」と加藤さんは語る。高齢者福祉の分野で企業ができる役割を模索し続ける。
「最近面白いことがはじまったんですよ」と次のような新しい試みを紹介してくれた。
ある作曲家からお年寄りと一緒に音楽作りをしてみたい、という提案があり同社も協賛、ある特別養護老人ホームが舞台となった。