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また、「ここが、私の最後の場所と思ってこれまで安心して暮らしてきたのに。介護保険制度は私に大きな不安をもたらしただけ。不安だらけよ。5年たてば89歳になるが、それから一人暮らしをはじめて、どれだけの間自立して生活できるというのか。具合が悪くなれば、また病院に連れて行かれる。そして、病院を転々とした揚げ句、結局特養ホームに入るしかなくなるのに、その時にまた1年半ほど待たされる。長生きすると、こんな目に遭うんだね。元気で長生きするように努力することがいいことではないこともあるんだね」とますます落ち込んでいく様子が感じ取れる。

生活相談員に話を聞いてみると、Nさんは、追い出されるのではないかと考え込んだり、心配で眠れず軽い睡眠剤を飲むこともしばしばあるようである。また、もう一人の男性は、毎朝、新聞の賃貸アパートの欄を見ては赤エンピツで印をつけ、ため息をつきながら「高くて年金では暮らせないな。何より、この年になって貸してくれるアパートあるのかね」とあまり口には出さないものの、かなり心配している様子だという。

厚生省の試算では、特養ホームの自立・要支援の入居者は全体のわずか6.7%である。退去するかしないかの決定は、本人が選択できる柔軟な制度にするべきだと思う。

 

お詫びと訂正

99年12月号本欄で「国民年金」とあるのは、「国民健康保健料」の誤りです。お詫びして訂正します。

 

 

 

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