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介護保険との関連でいえば、都道府県が握っている指定居宅サービス事業者(在宅介護サービス会社など)の指定、取り消し、指導・監督の権限は市区町村単独では持てないけれども、広域連合を結成すれば、それらの権限を都道府県に代わって行使できる。全国の市町村長の中で、この伝家の宝刀に真っ先に飛び付いたのが坂本町長なのである。

 

事業者指定権を握る唯一の広域連合に

 

介護保険法の成立は広域連合結成の機運を全国に広げた。九九年三月には全国で二二か所だったが同じ年の十一月一日には二倍以上の五六か所に膨れ上がった。そのうち介護認定審査会の共同設置など介護保険の仕事を実施するものは五二か所に達するが、県から権限委任を受けたのは五か所にとどまっている。介護保険の権限委任は九九年十二月末日現在、南部箕蚊屋広域連合だけである。

西伯町役場の二階にある同連合のオフィスを訪ね三島雅之事務局長に聞くと、事業者指定や四町村共通のコンピュータシステム開発などのほか、介護保険に関する苦情の窓口となる相談員を置いて、苦情内容を四半期ごとに発表することも検討しているという。

この地域の介護サービス提供は社会福祉協議会が担っているが、単独社協では進出する株式会社と太刀打ちできそうもない。そこで広域連合内の社協が連携して競争力を付けようとしている。その手はじめに四月から西伯町と会見町の社協が訪問看護ステーションの共同運営に乗り出す。「二四時間ホームヘルプサービスの体制も介護保険実施までに整えたい」(山中文雄会見町社会福祉協議会事務局長)。介護保険実施に伴う措置制度の解体によって存立の危機に瀕する社協も広域化に生き残りをかける。

介護保険は自自公合意によって党利党略の具とされたため新制度の全容がどこに落ち着くか「最後まで予断を許さない」(池田省三龍谷大学助教授)が、住民参加と地方分権の両輪を備えていれば福祉の町づくりはそれほど困難ではないだろう。

 

 

 

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