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「発起人の一人が以前、勤めていた高校の同僚だったことが縁で、設立と同時に会長(現理事長)を引き受けました。私自身は若いころより、学校や学習塾で子供たちの教育にかかわるなど教育分野一筋の人間でしたが、人生のお礼奉公だと思いまして福祉の世界に飛び込んだわけです」

以来九年、まったく無償のボランティアとして同団体にかかわってきた田中さんだが、その間に会員は徐々に増え続け、現在では約三〇〇名にもなった。それと共に、設立当初は二名の無資格ヘルパーではじめた有償家事援助サービスも、看護婦の有資格者の主任のもと、ヘルパーも二、三級各八名を含め、三〇名近くに増加。また、車イス一台が乗れるワゴン車と車イス二台が乗れる大型のワゴン車を保有し、通院のほか買物、会合、趣味の会への送迎を行ったり、日帰りや一泊旅行を催すなど、同団体は今や、地域社会の一人暮らしの高齢者や障害のある方々にとっては、なくてはならない存在となっている。

「世田谷区は以前から福祉政策に力を入れていることもあり、行政のサービスは比較的充実しているんですが、それでもわれわれのような市民団体のサービスを望む方が多い。それはなぜなのか…。先日も事務局には、"通院の際に、車の乗り降りの手助けをしてくれるだけでなく、待ち時間には退屈しないよう話し相手に努め、診療中も傍らに付いていてくれるので心丈夫だ"といった感謝の声が寄せられたんですが、やはりみなさん、心のふれあい、手作りの温かいサービスを待っているからではないでしょうか。

 

 

 

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