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いつも、買物などの手伝いをすると、お礼にマッサージをしてくれるものですから、どっちがボランティアをしているかわかりません(笑)。とにかく、活動を通じていろいろな人とのつながりができ、それがまた次の活動へとつながっていく。そんなことのくり返しの一五年でした」

斉藤さんはあえて口には出さなかったものの、頼まれるとイヤとは言えない性格のようで、現役中からさまざまな役員を引き受けていた様子。それゆえ、一九九六年の定年退職後に再びOBとして仕事に就いたものの、あまりにもボランティア活動が忙しくなり過ぎて、昨年の五月には、ついにきっぱりと仕事を辞めてしまったそう。

「各種の役員会は、ほとんどが平日に催されるんですが、月に三回も五回もあると、どうしても代理を立てざるを得ない。そんな中途半端なことじゃいけないと思いましてね」

なんと、潔いことか。多くのサラリーマンにはなかなかまねのできない行動だろう。会社人間として仕事一筋に生きてきた人の場合、定年後直ちに地域人間へ方向転換することはなかなかむずかしく、勇気もいるものだが、斉藤さんのように現役時代からかかわりを持った人の場合は、その延長線上で図らずも、こんなふうにしてスムーズに第二の人生へと移行していくこともできるのだろう。

「ボランティアをはじめたおかげで、たくさんの方と知り合えて、連携しながら活動することができる。それが一番の財産ですから、今後も手話を覚えるとか、点字を覚えるなどして、より幅広い福祉の活動をしていきたいと考えています。とにかくいろんなことにかかわって張りを持てば、病気も逃げていくはず。そういうことで、ぼくは元気で、九〇歳以上まで活動を続けようと思っているんですよ」

そう言ってアハハと笑った斉藤さん。白髪頭になっても、しわだらけになっても、ハツラツとして活動する姿が目に浮かぶ。さすがに、生きがいを持っている人は、人生観も飛びっきり前向きだ。

 

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99年10月の全国ボランティアフェスティバルみやざきにて。後列左端が斉藤さん。

 

 

 

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