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「当時、保安関係の仕事に就いていたため、二四時間勤務をして明け、公休と、勤務体系が変則でしてね。つまり、一〇日働いて二〇日休みなんですが、せっかくの休みも、たまに釣りに行くくらいで、何となくだらだらと過ごすことが多かった。それで、何か自分にできることはないかと思って、ボランティアでもやってみようかと、漠然と考えるようになったんです」

登録時には希望条件に合うボランティアはなかったものの、三か月後の一九八五年十一月に瀬谷区の福祉課から連絡が入った。それは、瀬谷保健所と社会福祉協議会が共催した痴呆に関する連続講座に参加した人たちが中心となって、痴呆のお年寄りのデイサービスを行う『もみじの会』が発足したため、送迎ボランティアとして協力してくれないかというものだった。

「地区センターを使って月二回デイサービスを行うとの話だったので、その程度なら協力できると思い、二つ返事で引き受けました。でも最初は、各家庭にお年寄りを迎えに行って、デイサービスが終わったら各家庭へ送りに行くという送迎だけのつもりだったんですよ。ところがどうせ家に帰っても暇だからと、デイサービスの様子をちょっと見学してみようと思い、参加をしたことから、そのうち一日中地区センターで過ごすようになってしまいましてね」

 

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『もみじの会』のデイサービスの様子。

 

それまで痴呆のお年寄りと接したことなどなかった斉藤さんだったが、その温厚な人柄と面倒見のよさから、お年寄りにとってはもちろん、数少ない男性ボランティアとして会にとってもかけがえのない存在となっていったこと。そして何より、斉藤さん自身が、ボランティアの楽しさに目覚めてしまったことが、活動に「はまってしまった」理由だという。

 

 

 

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