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最後に

「公」、「市民」は何をするべきか

 

イギリス、フィンランドといういわゆる福祉国家の取り組みは、日本の福祉自由化に何を教えてくれるだろうか。

整理すると、両国には二つの共通点が挙げられる。まず第一に、これらの国は以前から「公」が責任を持って、保健・福祉の専門職などの人材を養成し、さまざまな試行錯誤をくり返して、制度改善のノウハウも蓄えていった。いわば「福祉ソフトウエア」である。日本ではすぐに施設の建設といったような箱物、ハードの整備に目が向きがちだが、私が強調したいのは、こうした「福祉ソフトウエア」の蓄積こそが、いざ自由化という時に大変重要な資源になるということだ。

第二に、イギリスもフィンランドも以前からNPOが活躍する下地ができていたことが挙げられる。NPOは、サービスを提供するだけでなく、サービスの監視などを含めて自由化による弊害解決に向けた利用者の参加の受け皿にもなっている。

世帯主が「65歳以上の世帯」は1995年から2020年でほぼ倍増。中でも単独世帯(一人暮らし高齢者)の割合が約2・5倍と高くなることが予想される。さらに「75歳以上の単独世帯」では、その伸びは3倍以上にもなるという。日本社会の枠組みが大きく変わっていく今、たとえ高齢になっても一人になっても、最後まで心豊かな人生を送ることができるような仕組みづくりが急がれる。行政の新たなパートナーとしてNPOやボランティアが活躍できる下地づくりが大きな課題だ。

 

日本の高齢化事情

 

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(国立社会保障・人口問題研究資料より)

 

このように両国の福祉自由化は、まさに公と民が車の両輪のような関係で支え合う方向を示している。行政が普遍的なサービスを充実し、市民が「公」の役割と限界を認識した上で、NPOを通じたサービスを提供し、さらには利用者の利益保護活動を積極的に行うのである。

 

 

 

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