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「介護は誰が負担する?」

福祉自由化への道

 

高齢化への先進各国の対応はさまざまだ。特に介護サービスの提供の仕方はその国の政治機構や文化を素直に反映している。

日本ではこれまで長い間、家族と「公」つまり行政を中心とした介護が行われてきた。一方、福祉先進国として挙げられる北欧などは高福祉高負担。よく知られるように税金による行政機関のサービスが中心で、家族介護の負担軽減を図ってきた。「介護は誰が提供すべきか?」、その意識は国によってまちまちだ。

しかし近年、実は似たような動きがある。企業やNPO(非営利組織)などが参入する「混合型の福祉」という名の自由化だ。日本の公的介護保険導入もまさにこの「混合型」への転換といえるだろう。

ただしこうした福祉自由化も、たとえば欧州で成功する手法が日本でそのまま通用するとは限らない。各国の歴史や生活スタイル、宗教などの文化的な背景がまず違う。また「行政がそれまで福祉分野で果たしてきた役割」や、受益者つまり「施策の対象者をどの層にし、今後どう変えるのか」という政治や制度的な要因が、大きく関連してくる。

 

「ゆりかごから墓場まで」の終えん

欧州の自由化の背景とその影響

 

イギリス

─「小さな政府」の功罪

 

ここでまず、福祉自由化の先陣を切ったイギリスの状況を見てみよう。

「ゆりかごから墓場まで」

これはかつてイギリスの手厚い福祉国家づくりを代表した言葉としてよく知られている。そこに自由化というくさびを打ち込んだのが、時のマーガレット・サッチャー首相だ。

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