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特に、高齢者や障害のある方を対象とした美容ボランティアとして親しまれている「身だしなみ講座」は有名で、素顔に口紅を塗りネックレスを身に付けただけで高齢者の表情がパッと明るくなり、行動も前向きになるなどの著しい変化が表れるという。この活動のルーツは戦後まもなくの一九四九年ごろにまでさかのぼる。当時「整容講座」として支社単位ではじまったものがやがて障害者等も対象として全社的に拡大し、現在では年間三万人もの参加者を集める活動にまで成長している。

これらの活動を推進するのが企業文化部。一九九〇年に設立、現在二八名の部員がおり五つのグループに分かれる。社会貢献事務局をはじめとして、アートスペース運営、文化イベント運営、文化情報誌『花椿』の編集・制作、企業資料を一元的に収集、管理し、情報発信する企業資料館、アー卜ハウス運営など文化関連事業の多さが際立つ。

「ソーシャルスタディーズ制度」は従業員が社会活動へ参加することにより自らを高めていくことを積極的に応援する制度である。年間三日を上限とし、取得日は通常業務として「出勤扱い」とし、社会貢献を目的としたさまざまな活動を行うために、会社ではなく「社会へ出勤」することとなる。また、社会貢献活動への関心の深さは資金面にも表れており、経常利益の三%を目安として社会活動全般に、その三分の一を芸術文化支援活動に充てることが明確にされている。経常利益は変動するものの、三%はしっかり維持されている。

「当社を『文化企業』と言ってくださった方がいますよ」と西野課長、「文化」という言葉がこれほど良く似合う企業も少ないだろう。新しい時代の企業像を追求する資生堂に期待しよう。

 

 

 

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